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ちょっと物語-6-①

「死刑になりたかった人」-①

T氏41歳は、半年前に勤務先が倒産し突然職を失ってから、職探しに自分なりに

頑張ったつもりだったが、自分が続けられそうな職は、相手方の会社から断られ、

とても続けられそうに無い職は、こちらから断り、とにかく仕事が見つからないまま、

いよいよ蓄えも底を付き、絶望感に囲まれていた。

職探しの為に職安に通い、結局今日も仕事が見つからず、周りを見ると、

派遣社員や元派遣社員は何だか世間が暖かく助けてくれるみたいなのに、

元正社員だったT氏41歳には、冷たい気がした。

年越し派遣村は派遣を解雇された人しか入れないみたいだったし、

職安でも派遣社員を優先しているように感じていた。

ただの思い過ごしかもしれないが。

不況が厳しさを増すと、勤めていた会社が倒産したという人間は、

縁起が悪くて雇いたくないと思っているのではないかとも考えたくなってくる。

ただの被害妄想なのだろうけれど。

実際には本当に仕事が無いだけだろうけれど、T氏41歳にはどちらでも同じで、

雇ってもらえないだけの話だが、本当に仕事が無いだけだとすると本当に

救いが無いから、何か特別な理由を見つけ出したいのだ。

世の中には、親のすねをかじるとか、親の遺産とかで食べている人もいれば、

宝くじを当てて、何不自由なく生活している人もいるだろう。

なのに、私のように遺産も籤運も仕事も金も、何も無い人間もいて。

実際、私の様に何も無い人間の方が少ないのだろう、みんな何かしら持っているのでは

ないだろうか。

財産として持っていなくても、運とか才能とか、金を稼げる何かは持ってそうな気がする。

たぶん、私のように何も持っていない人間は、ごく少数派なのだろう。

そうだ、私もまだもっているものがある、罪悪感だ。

人より多めに罪悪感を持っているから、まだ泥棒とかする気にはなれないでいる。

もう家賃も払えない、そのうち電気も止められるだろう、水道は最後になるか、

その前にマンションを追い出される。

41歳でホームレスになるのは辛い。

いっそ暖かい部屋にいられる間に、この暖かい部屋で自殺してしまおうか。

しかし、自分には死ぬ勇気なんて無い、自殺する勇気など無いから、

生き続けているというところがある。

死ねないならば生きる方法を考えなくてはならないが、仕事が無いし

ホームレスのような事も出来そうに無い。

やはり、最後に残った罪悪感ってやつを捨て去るしかないのだ。

だが、つかまって刑務所で長年暮らさなければならないのも凄く嫌だ。

捕まるなら死刑になった方がましだ。

T氏41歳は、かなりの潔癖症だから、ホームレスとか刑務所暮らしとか絶対に

したくなかったのだ。

死刑になるためには、人を殺すしかないだろう、日本国内ならば。

国外ならば、例えばアメリカならば、人質をとって立てこもれば、警官に狙撃されて

一発で死ねるのではなかろうか。

たしか、中国か何処かでは、麻薬売買でも死刑になると聞いた事がある。

しかし、中国の死刑は残酷な方法じゃないだろうか。

やはり、アメリカが確実だろう、そうなると、パスポートや旅費が問題だ。

ちょっと物語-6-②

「死刑になりたかった人」-②

翌日から、T氏41歳はアメリカ行きを計画し、準備に入った。

当面の生活費と旅費を工面する為に、まず返すあては無いが借金する事にした。

しかし、半年以上無職で保証人も担保もなしでは、10万円借りるのがやっとだった。

以前から借りた履歴がありきちんと返していれば、実績有りでもっと借りられたらしいのだが、

全く借金をしたことが無い為に、かえって信用が無いらしい。

T氏41歳は、覚悟を決めて、罪悪感を捨て去って、空き巣ででも稼ごうと考えた。

素人の未経験者が、空き巣なんかうまく行くはずが無いとは思ったが、

努力せずにあきらめたのでは、負け組みになってしまうのだからと、

とにかく歩き回って狙えそうな家を物色した。

アパートとかマンションは、入り口のドアの施錠を開けられないから無理だと思った。

だいたい、入り口は見通しが良すぎる。

高級住宅の類は、敷居が高すぎるし、金のある家は戸締りや防犯もしっかりしていて、

とても素人には無理だろうと思った。

普通の住宅は入りづらいと思っていると、元農家なのか現在も農家なのか、

ブロック塀で囲まれた広い敷地に、いくつかの建物があり、その中の古い建物が

何となく入りやすそうに思えた。

人の気配がしないので、そっと塀の中に入ってみた、

古い一番大きな建物は入り口の引き戸が少し開いていて中がうかがえたので、

そっと覗いてみた。

中はとても静かに感じられたが、何か嫌な気配のようなものも感じた。

そっと引き戸を開け、中に入り込み、さらに土間の奥へと進み、

そこで倒れている人を見つけてしまった。

血まみれだった。

しかし、人が死んでいてこれだけ静かと言う事は、生きている人間がいないという事だろう。

ならば、空き巣にはちょうど良いではないかと考えてしまった。

そもそも、生きていないとはいえ人がいるのだから、空き巣といえるのだろうか、

などと仕方の無い事を考えつつ物色する為、土間から座敷へ靴のまま上がり込んで、

さらに奥の部屋に遺体を発見した。

こちらも血まみれだった。

仏壇やたんすを物色し、台所へと進み、水屋の引き出しの中から現金の入った

封筒を見つける事が出来た。

現金が見つかって、T氏41歳は、長居は無用と急いで玄関に向かった。

急いだ為に敷居につまずいて転び、手を着いてところで床に流れていた血が少し付いてしまった。

一旦台所に戻り手を洗い、再び玄関に向かった所で運悪く帰ってきた住人に見つかってしまった。

ちょっと物語-6-③

「死刑になりたかった人」-③

逮捕されたT氏41歳は、警察官から死体が3つもあった事を知らされて、愕然とした。

殺されたのは農家の62歳の祖母と65歳の祖父と6歳の孫娘の3人で、

T氏は帰宅してきた母にぶつかってしまい、悲鳴で駆けつけた近所の人達に囲まれて

しまったのだった。

3人も殺した強盗殺人であれば、もうどんなに頑張っても、死刑は確定だろう。

あの状況で正当防衛なんてありえないから、自分が犯人と言う事になれば、

どうにも死刑は逃れられないだろう。

警察は、完全にT氏41歳を犯人と考えて、疑いを持っていない様子だ。

素直に犯行を認めれば、楽に死刑にしてくれるだろうか、

それこそ自分の望んでいたことのはずだ。

しかし、いざとなると恐ろしくて仕方ない。それに、真犯人が逃げおおせてしまうのも、

何だか腹が立つ。

「何故あの農家に侵入したんだ」警察官は質問を始めた。

「お前があの家に入ってからの行動を一通り、正直に話してみろ」

T氏41歳は、まずは正直に話してみる事にした、それで殺人犯にされても、

もう運命とあきらめた方がいいだろう、何しろ運の悪い人間なのだから。

「なかなか仕事が見つからなくて、金も底を付いて、とにかく金が必要で、

空き巣でもするしかないと思いまして、たまたまあの家を見つけて、人の気配が無くて、

でも玄関の引き戸が少し開いていたので、つい中に入りました。」

「それから」

「玄関の隙間から中をのぞいても、人の気配がしないので、思い切って引き戸を

開けて中に入ってみました。そしたら、中で人が血まみれで倒れていて」

T氏41歳は全て正直に話した。警察官は一通り話を聞いてからいろいろと質問を

しながら、最初から繰り返し説明させた。

T氏41歳は繰り返しの説明に飽き飽きしながらも、我慢して繰り返し同じ説明を続けた。

結局T氏41歳は窃盗犯として逮捕され、初犯で反省しているとみなされて

起訴猶予処分となり、数日で釈放されてしまった。

殺人犯は父親で、犯行後逃走を考えたが、自分がいなくなれば犯人としてすぐに

追われることになり、逃げ切れないと考えなおして自首していたのだった。

T氏41歳は結局死刑になる事は出来なかったし、アメリカに行く事も出来なくなってしまった。

途方にくれて、もう餓死でもするしかないかと、弱り果てていた。

ところが、運の悪いはずの自分がだめもとで買っていたロトシックスが高額当籤していた。

エリートサラリーマンの生涯年収以上の額を受け取る事になった。


結局、T氏は人より多く持っていると思っていた罪悪感は少なくて、

無いと思っていた運はとても強かったのだ。

なにしろ、半年間の不摂生と宝くじ当選の驚きと興奮で、

望み通りあの世に行けたのだから。

世襲政治家。

最近、政治家の世襲が話題になっているが、世襲議員が多くなる原因は、

政治家自身をきちんと見て判断して、投票する事が出来ないからだと思う。

だから、親を知っているとか、応援を頼まれたとかと言う理由で、投票する事になる。

選挙の時、政治家の良し悪しを判断する判断材料があれば、

誰しも自分で判断して投票するだろう。

しかし、そのような判断材料が無く、どの候補者も似たり寄ったりに見える

ポスターや演説だけで判断しようとするから、政治家○○の子供とか、

政治家○○の跡継ぎとかの言葉で、まったく知らない人よりはマシだと思って

投票してしまうのだろう。

判断基準が知らない人よりマシでは、良い政治家を生み出すのは難しい。

ならば、政治家に試用期間を設けて、最低賃金で一定期間見習いをさせて

その働き具合を見てから、本選挙に出馬させるというのはどうだろう。

もちろん、マスコミには一定時間見習い政治家の様子を、放映する義務を持たせる。


けれど、公職選挙法による奇妙な制限をなくし、政治家自身がもっと自分の考えを

発表出来る様になれば事足りるような気もする。

ちょっと物語-5

「超能力話」

T氏とK氏は超能力研究について話し合っていた。

「超能力の開発は、ばかげた研究かな、研究の末誰でも超能力が使えるようになれば、

すばらしい事だろう。世の中への貢献度としても、十分評価できる」

「具体的には、どんな超能力なら社会的貢献度が大きいと思う」

「そうだなー、透視能力とか、念動力とかはどうだろう」

「それは何に使えるかな、人が隠しているものを見るのは犯罪みたいだし、

手を使わずに物を動かせるとして、手で動かすより便利になるかな」

「何かものすごい力が発揮できないと意味なさそうだな。

予知能力とか、テレパシーとか、瞬間移動とかは、良いんじゃないか」

「良いかもしれないけれど、そもそも引き起こす現象自体が、物理的に不可能な事では、

初めから研究する意味は無いだろう。だから、瞬間移動や予知能力は凄く便利でも、

初めから候補に載せるべきじゃないと思うんだけど」

「そうすると、テレパシーか」

「テレパシーだと、初めから物理的に不可能とまでは言い切れない気がするな、

電磁波とかを敏感に感じたり、増幅して発信したりできれば、もしかすると可能かも知れない」

「そうだなー、でもちょっと待ってくれ、電磁波を感じたり電磁波を増幅して発信したりする

機械って、この携帯電話もそうじゃないか。ちょっと待てよ、テレパシーの定義って何だ」

「離れた所にいる人に考えている事を瞬時に伝えたり、逆に離れている所の人の考えが

判ったりする事かな」

「だとしたら、携帯電話ってまさに、テレパシーじゃないか、つまり機械を使って

テレパシーと同様の能力を持たせるとしたら、携帯電話でよいじゃないか」

「と、いう事は、現代人はみんな携帯電話を持つ事によって、テレパシー能力者になって

いるって事か、じゃあわざわざテレパシー能力を開発する研究なんて意味無いって事だ」

「それどころか、超能力で実現可能なもので、実用性がありそうなテレパシーがすでに、

携帯電話で用が足りているという結論ならば、超能力なんてもう研究する意味が無いじゃないか」

「そういうことだな」
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