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「帰宅物語」-① 

関東大震災と言うほどではないにしろ、かなりの大地震が発生したとき、K氏は外出中だった。

午後2時過ぎに発生した地震は、震度6程度あると思われたが、

建物の被害は見たところほとんど無い。

電力供給はストップしたようで、信号は消えているし商店の看板やビルの照明も

消えているようだった。

被害が大きくなければ電力供給も直ぐに回復するだろうし、

電力さえ回復すれば鉄道はまもなく動き出すと、甘い甘い考えを持っていた。

建物などへの被害がまったく無く停電さえしなかった震度5の地震でさえ長時間鉄道はストップし、

大勢の人がなかなか帰宅できずに大変なめにあったのだから、

震度6かもしれない今回の地震では、どれだけ長時間鉄道が停止するか分からない。

K氏は甘い考えに基づいて、電車が動き出すのを待つ事にした。

地上の駅は停電して、改札機も案内表示も消えていて駅員は何の情報もないのだろう、

ただ冷静に行動してくださいと叫ぶだけだ。

改札内には自由に出入りできるみたいだが、改札機を通さずに入って出れなくなると大変だし、

どこか座れる場所と考えると駅のホームとか待合室のベンチが思い浮かぶのだが、

どうしたものかと駅前をうろうろする。

地下鉄の方はどうなのだろうと思い、地下への入り口を覗くと非常電源で一部照明が

点灯しているようだが、薄暗くてとても入る気になれない。

周りを見渡すと、タクシー乗り場には長い列が出来ているし、情報を求める人が駅員を取り囲み、

徐々に混乱が増していくように思えた。

携帯電話を取り出して見るが圏外のままだ。

思っているより被害が大きいのかもしれない。

都心は震源から離れていて、震源地ではもっと凄い事になっているという可能性も考えられる。

動いている公共交通機関はタクシーだけのようだ、バスは動いていてもよさそうなものだが、

一台も見かけない。それになぜかバス停には人が一人もいない。

K氏はふと思い出して、携帯を取り出しワンセグ放送受信モードにしてみたが、

何も受信できなかった。

携帯を操作していてFMラジオを聞ける事がわかり、早速説明を読んでみたが、

アンテナとしてイヤホンを使用するとか別途利用料がどうのこうのの説明で

聞くのをあきらめてしまった。

じっと待っていても疲れるだけだし、タクシーの台数に対して待っている人の数が

あまりにも多くて、到底今日中には乗れそうも無いと思い、

考えてみたら電車は停電が直っても、点検に時間を要するから、

まだ数時間は運休したままだろうと考えを改めた。

K氏はとりあえず自宅に向って歩く事にした。


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