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「全休日」-8

ノブオは「ちょっと待ってて」と言い残し、

一方の道へ小走りに向かい、しばらく歩いていった後、戻ってきて、

ナミの目の前を素通りして反対側の道を暫らく進んでから、

手をふって「こっちへ行こう。あっちの道は行き止まりっぽいから」

とナミを呼んだ。

進む方向が定まれば、先ほどのノブオの理屈通りで、

空港へ向う人が居れば必ず途中で会えるのだから、問題ないはずだ。

2人はノブオの選んだ道を、街を探して歩き始めた

一時間も歩かないうちに、二人とも少し後悔し始めた。

一向に民家も何も見えて来ないのだ。

そして、1時間以上歩いても建物が見えないのは、

道を間違えたからではないかと不安に思い始めるが、

戻るにも1時間以上掛かるから、そのまま惰性で歩き続けてしまう。

2時間ほど歩いて、昼過ぎになってやっと民家が見えてきた。

しかし、ぽつぽつと家が点在する村に、人影はなくよりいっそう不安が募る。

暫らく進むと再び民家などの建物が途切れ、

しかし、道がいろいろな方向に枝分かれしている。

下手に歩き回ると道に迷ってしまうと思うのだが、

じっとしている事が出来なかった。

遠くに集落が見えるから、そこまで行かなくてはと思う。

暫らく歩いているうちに、もう空港がどの方角だったかも見失っていた。

なので、つい先ほど遠くに見えた集落に向って歩くしかなかった。

日が傾き始めた頃やっと人の居る集落に到着した。

言葉の分からない二人は、

手振りと日本語で何とか意思の疎通を図ろうと頑張った。

しかし、まったく通じないばかりか、

住民は誰も相手にしてくれなかった。

「全休日」-7

「まさか、本当にバイオハザードなのかしら」

「それって、空港周辺で何か細菌がばらまかれて封鎖されているとかって事」

2人は顔を見合わせて、がっくりと肩を落とした。

「とにかくここに居てもどうしようもないみたいだ、どうする」

「でもまだ朝早いって事ないかしら、

この国では働き始める時間が遅くて、

みんな昼頃にならないと動き出さないとか」

「確かに、この国の習慣は分からないから、

もしかしたらそんな事もあるかもしれないけれど」

それから2人いろいろと話し合うが結論が出ない。

そのうち時間は過ぎて昨日の夜も食事抜きの2人は、

空腹感に悩まされ始める。

「とにかく近くの街まで行けば何か分かるかもしれない、

少し歩くけど行って見ないか」

ノブオは、誰も人が居ないことへの不安に加え、

空腹を満たしたくて、じっとしているのが耐えられなくなってきた。

「ええ、でもどちらに向えば良いのかしら。

じっと待っていた方が良くないかな」

ナミは人が居ない事への不安や空腹もあるが、

それに加えて知らない国に居る事の不安が大きかった。

だから、あまりうろつく事をよくないと感じていた。

女性の感は当たるのに、ノブオは理屈で押した。

「たぶん、そのうち誰かがやって来て営業再開するにしても、

この道かあっちの道を通ってやってくるはずだから、途中で出会うはずさ。

だから、ここでこのままじっとしているより、

どちらかの道を歩いて街へ向かった方が、より早く誰かに出会えるよ」

ナミもこの言葉に納得し、「でもどちらへ進むの」と問い返した。

「全休日」-6

空港待合室に戻り、どこか横になれる場所はと探すが、

そこら中にソファーが並び、横になるだけならば何処でも良いと分かると、

より寝心地のよさそうな場所を探し始める。

空調は停止しているので、深夜になるにつれて冷え込んでくるから、

毛布の一枚ぐらいは欲しくなる。

2人とも荷物だけは目的地の空港に送られているみたいで、

手荷物としてノブオは小さなセカンドバックを、

ナミはショルダーバックを持っているだけで、着替えなどは無く、

上に羽織れる物も無かった。

なので少しでも暖かい場所、

外の寒気がやってこない場所を探し、階段を登った。

二階には事務室しかなくて、どの部屋もしっかりと施錠されていた。

仕方なく一階に戻ると出発ロビーに行き、

空調のスイッチを探してみた。

空調機は元電源を切られているのか、

空調機自体のスイッチをいじっても無反応だった。

電源の場所はさすがに見つけられず、

結局肌寒いロビーで少し、うとうとしただけで夜明けを迎えた。

日が昇り明るくなっても、人っ子ひとり現れる事はなく、

2人の不安が更に高まる。

日が昇り明るくなった所でもう一度空港施設内を見て回る。

2人きりの不安と心細さから、

離れ離れで手分けして人を探すという考えは、

まったく思い浮かばない。

二人連れ立って建物の中を一周し、誰も居ない事を改めて知った。

夜間の間だけ人がいなくなるのならまだしも、

夜が明けてからも誰も居ないのは異常だ。

時計を見るともう午前9時を過ぎている。

空港の外に出てみても、誰かがやって来る様子が無い。

バイオハザードの言葉が2人の脳裏を通り過ぎる。

全休日を知らない2人には、何らかの事故の類としか考えられなかった。

「全休日」-5

2人は躊躇して暫らくその場で様子を伺っていたがやがて、ナミが決心し

「出てみましょうよ、ここに居てもどうにもならないみたいだし」と言いだし、

ノブオも「そうだね、まあ、パスポートは持っているから大丈夫だよね」と言い、

二人は連れ立って外に出た。

出た場所は本来入国審査などを行なう場所のようなのだが、

人っ子ひとり居なくてがらんとしていて、

非常灯しか点灯していなくて、薄暗い場所だった。

自然とナミはノブオの体につかまりながら歩く格好になる。

「かってに出ても大丈夫よね」

「ああ、誰も居ないって事は良いって事だろ。

それにしても人っ子ひとり居ないって言うのはどういう事だろう」

「どういう事って」

「いやさ、少なくとも警備員くらいは居てもよさそうなものじゃないか。

本当に僕達以外居ないってのは、変だよね」

「まさか、バイオハザード的な事とか」

震え上がる2人、薄暗い異国の地で、変な想像はすべきでないと二人して思う。

入国審査所的な場所を通り抜け、

外の待合室に出ると少しは明かりがあり、ホッとする。

しかし、空港の外に出て2人は更に恐怖を覚える事になる。

空港は、人里はなれた山の中だった。

そして、外にまで出ても人影がまったく無くて、

明かりは非常灯と僅かな常夜灯のみであり、

空港の周りには人が居ないだけでなく、

車の一台も無かった。

それでもはるか遠くに街の明かりは見える。

ここで2人はどうしたものかと悩む。

悩んだ末に、空港の待合室に戻って一夜を明かすことにした。

空港内であれば、水道もトイレもあるので、空腹さえ我慢すれば凌げる。

知らない国の夜道を歩くほどの馬鹿では無いと自分たちのことを思った二人だった。

「全休日」-4

物陰から様子を伺っていたナミだ。

日本語で呼びかけながら歩いている姿は、悪者には見えないし、

同じ日本人と言う事で大丈夫と判断し姿を現した。

ノブオは突然現れた人間に驚いたが、

それが自分よりか弱そうな女性と分かり、

直ぐに落ち着きを取り戻した。

「びっく・・いや、いたんですか、空港の方ではなさそうですね」

「ええ、私は観光で立ち寄っただけです。貴方もですか」

「はい、僕も観光です。ここは乗換に寄っただけなんですが、

どうも乗換の飛行機においていかれたみたいです」

「えっ、乗換の飛行機って、ブカレスト行きの便ですよね」

2人は並んで出口に向って歩き始めた。

「ダッカからの便に乗って来てこの空港にかなり遅れて到着して、

でもこのロビーで待っていれば乗り換え便に乗れるのかと思っていたのですが、

急に明かりが消されて、外の管制塔の明かりも消えましたから、

今日はもう飛行機は飛ばないって事だと思います。

なので乗換の飛行機において行かれたっぽいです」

「そうですね」

二人が出口らしき所に到着すると、

出口のゲートは開いているが、人影が無い。

「どうします」とナミが訊ねると、

ノブオは「どうしましょうか」とやはり困って見せるだけだった。

2人が躊躇せずに直ぐに飛び出していれば空港関係者に拾われたかもしれないが、

ここで躊躇し時刻が11時を回ってしまった為、

もはや空港には人っ子ひとり居なかった。

全休日で警備の仕事も休まなければならないから、

そして人里はなれた空港は明後日の朝まで誰も居ない場所になる。

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