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「シャーペン君」-7

「ぼくがボールペンではないと言うなら、何なのだいったい」

それから暫くは、自分が何なのか考えたけれど、

考えても何も分からないから、そのうちにそんな事は忘れ去ってしまった。

それから長い月日が流れた、

ぼくの中のインクはかなり少なくなってしまった。

もう直ぐインク切れで書けなくなってしまうだろう。

もう直ぐゴミ箱行きだろうと思っていた。

『もうすぐインク切れね、換えのインクって有ったよね』

『ええ、はいこれね』

『ありがとう』

ぼくの体がひねられて分解された。

ぼくの中の少なくなっていたインクが別のものに入れ替えられた。

『これって全体でボールペンだけど、

この中身は中身だけでも一応文字が書けるボールペンとして成り立つよね。

それじゃあ外側は、インクの部分を取り去ったら、これって何なのかしらね』

『何ですか、ちょっと哲学的な質問ですね。

でも外側だけだと確かに何物でもないかもね』

確かに、ぼくはボールペンではなくボールペンの外側に過ぎなかったのだ。

文字を書いていたのも結局は、先ほど捨てられた中身の部分だものな。

ぼくっていったい何なのだ。

そう、彼はボールペンの外側どころか、さらにその外に取り付けられたグリップだった。

-END-

「シャーペン君」-6

彼女が再びぼくを手に取り、ぼくの周りのめんどくさい袋を破り、

ぼくを引き出してくれる。

初めての開放感を味わう。

ぼくを握り直し、ペン先を紙に押し付ける。

何か分厚いノートのようなものだけど、

書かれている文字は全てインクで書かれていて、

鉛筆書きはされていない。

初っ端から下書きか、上からボールペンでなどられて、

ぼくの書いた文字は直ぐに消されてしまう。

むなしい仕事だ。

彼女は、ぼくを使って次々数字を記入していく。

ぼくは足元を見た、ぼくが書いた文字を眺めてみた。

何故だろう、何故だかぼくの書いた文字はインクで書かれた文字だ。

『新しいボールペンね』彼女の隣の席の女性が彼女に問いかけた。

『ええ、コンビニで見つけたの、ちょっと変わってるでしょう。

会社で支給されるボールペンじゃあ手が疲れて仕方なくて、

疲れにくいグリップ付きってなんだかずんぐりしてるでしょう、これが良いらしいのよ』

『へえー、そうなんだ、私も今度買ってこよう』

ちょっと待ってくれ、それじゃあぼくはボールペンだったのかい。

そういえばコンビニの売り場でも会話できたのはボールペンだけだったしな、

何だそうだったのか、良かったよシャーペンじゃなくて。

『あら、そのボールペン買ったのね』

『あっ先輩、教えてもらったの買いましたよ、ほんとに書きやすいですね』

『そうでしょう』

その時先輩が手にしていたものが話しかけてきた。

「おい、お前、もしかして自分はボールペンだと思ってないか」

「えっ、ああ、はい、どうやらぼくはボールペンみたいです」

「お前な、ボールペンて何だと思ってるんだ。俺達は」

その時先輩の女子社員はその場を立ち去ってしまった。

「シャーペン君」-5

両横にもびっしりとシャーペンやらなにやらの商品が並んでいるから、

良く見えるようになったのは、前方の陳列棚だけだ。

目の前の陳列棚には、ぼくらとはあまり関係のない、スナック菓子が並んでいる。

パンパンに膨れ上がった袋に入ったスナック菓子たち。

買い物客は、ぼくらの方より

スナック菓子を見ている人の方が圧倒的に多いのがなんだか悔しい。

中年の男がやってきて、やはりスナック菓子を眺めている。

どうせぼくらを買うつもりは無いのだろうと思っていたら、

突然こちらを振り向いて、ぼくを手に取り買い物籠に放り込んだ。

いよいよぼくは買われていくのだなと思い、

退屈な日々ともおさらばだと喜んだ。

しかし喜んだのもつかの間で、

中年男はかごの中のぼくを再び手に取り睨みつけたと思ったら、

陳列棚のフックに戻してしまった。

しかも、間違ってボールペンが並んでぶら下がるフックへだ。

その列の先頭にいたボールペンが一応声をかけてくれた、

「お帰り」と一言だけだが何となく慰められた気がする。

ところがぼくはついていた、

ほんの数分後にぼくは再び手に取られ、そのままレジへと運ばれた。

ぼくをレジへと運んだのは、女性の会社員。

会社の制服らしきものを身につけていた。

ぼくは彼女の手に握られたまま、彼女の会社に運ばれて、

彼女の机の上に置かれた。

いよいよぼくの初仕事だ、どんな仕事をすることになるのだろう。

初文字は何だろう。

やはり最初は何かためし書きされるのだろうか。

でもシャーペンだから、正式な書類の作成には使われないのだろう。

下書きか、メモ書きか、それもぼくの運命だから仕方が無い。

「シャーペン君」-4

「さあ、どうかな。

俺もまだ使われたことは無いけど、

あんまり頭をはずされたりはしなさそうだし、

インクはたっぷり詰まってるから、そうそう簡単に無くなりそうには無いしな、

シャーペンよりはだいぶマシだろう」

「そういうものかな、

確かにシャーペンの芯で書かれた文字は頭の消しゴムで消せるから、

せっかく一生懸命身を削って書いても、

あとで消されるかもしれないと思うとむなしいものもあるな」

「おい、うるさいぞ、筆記用具ってな、無口なものと決まってんだ、静かにしてろよ」

別のところから文句を言われ、ぼくらは黙り込んだ。

確かに筆記具はあまりしゃべるべきではない。

暫くするとお客が来て、ぼくの手前の一本を手にとって買い物籠に放り込んだみたいだ。

店内に陳列されたと言っても、ぼくはまだ奥の方にぶら下げられているから、

今ひとつ店内の様子が見えない。

もう少し我慢していればそのうち前の方の者達が全て売れて、最前列になるだろう。

そうすれば店内の様子も良く分かるに違いない。

黙ってただぶら下がっている時間が過ぎていく。

コンビニというところは時間の感覚が無い場所だ。

いつでも明るくて、いつでも人がいる。

「おーいシャーペン、元気でな。俺は買われていくぜ」

会話を交わしてからずいぶん日にちが経っていたと思うが、

ボールペンのヤツが売れたみたいだ。

「がんばってこいよ、またなー」と送り出す。

そのときにはぼくの前にはまだ2本のシャーペンが並んでいたから、

ヤツの姿は良く見えなかった。

それからまた長い時間が経ち、ついにぼくが最前列になった。

確かに視界は良好になったけど、それほど広い範囲が見渡せるわけではなかった。

「シャーペン君」-3

僕は後ろのヤツに問いかけているのにと思い、

少しむっとしながら、もう一度問いかけてみた。

「あの、僕の後ろの方、何か知っている事って有りませんか、

僕の後ろに居るって事は、僕より長くここに居るって事ですよね」

「馬鹿だな、後ろに居るって事は古いとは限らない。

先入れ先出しで、商品を並べるときは、古いやつを手前に持ってくるのが常識さ」

また、遠くの方から返事が来た。

しかも、少し僕を馬鹿にしている。

でも、腹を立てたりはしない、

腹を立てるとお腹の中の細い芯に悪い気がするし、

世間知らずなのは事実だから馬鹿にされても仕方が無いと思う。

それにしても、なぜ直ぐそばに居る連中は口をつぐんだままなのだろう。

仕方なく遠くのヤツと会話してみる事にした。

「あんたさあ、ここは古いのかい」

「たぶんあんたよりは古いんだろう。

それでもまだ一日二日しか経っちゃあいないよ。

お前さんは今朝来たばかりだろう」

「ああ、今朝運ばれてきて、箱からやっと出たら、

いきなり踏み潰されそうになって、

それでも何とかここにぶら下げてもらったってとこさ」

「俺は、ボールペンだけど、あんたは何だね」

「ぼくは、シャープペンシルだよ」

「へー、大変だなー」

「何だよ、何が大変なんだい」

「え、だって、シャープペンシルって、中身の芯が折れやすいし、

頭の中に消しゴムが付いてて、どっちもしょっちゅう出し入れとか、

こすられたりとかするんだろ」

「まあ、たぶんそうだろうけど、ぼくはまだ人に使われたことが無いから、

実際のところは分からないよ。

それよりボールペンて言うのも大変じゃないかい」

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