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「乾電池くん」-5

今日こそは、今日こそはと待ち続けるが、

ぼくが活躍するときは一向に訪れない。

ある日書棚の引き出しが開けられて、

いよいよぼくの出番かと期待すると、

ぼくらより少し小ぶりのアルカリ乾電池4本セットの

プラスチックシートが破られて、2本だけが取り出されて行った。

「がんばってこいよ」と声をかけたのに、

やつらはやはり何も言わないで出て行った。

ぼくも残念ながら人間の言葉は話せないから、

この部屋の主である男に話し掛けることが出来ない。

自分の将来が知りたいから、同じアルカリ乾電池仲間に問いかけるのに、

みんな無口でまったく答えてくれない。

他に誰か言葉の通じるものがあればよいのだが、

少なくとも引き出しの中には居なさそうだ。

一月ほど経ったとき、やっと僕らが手に取られるときが来た。

男はぼくら4本セットを手に取ると、

めんどくさそうにプラスチックのシートを引きちぎり、

ぼくとは反対側の端っこの一本だけを取り出して、

残ったぼくら3本を元の入れ物に戻し、引き出しを閉めてしまった。

まずいと思った。

1月以上かかって最初の一本が取り出されたということは、

ぼくにまで順番が回ってくるのは後3ヵ月以上先になりそうだ。

暗くて、話し相手の1人も居ない寂しい引き出しの中で、

後3ヵ月も我慢しなければならないと考えると、恐ろしい。

それでもそれがぼく達の運命ならば仕方が無い。

いずれにしても待っていれば、いつかは順番が回ってくるのだから、

あせらず待ち続けるしかない。

ちょっとした修行だと思うしかないだろう。

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