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「何でも作れる」-7

宇宙エレベーターは、

すでに中国・ロシア・インド・アメリカ・オーストラリアで

実用化の段階に入っているが、

やはり国家機密としているところばかりで、

各国の軍が圧力を掛けて、公表を拒ませているらしい。

各国が軍事機密扱いする中で、

日本だけが実用化できましたと発表させるわけに行かないと言う理由で、

日本政府に圧力がかかり、

完成後民事使用しか想定していない日本は、

使用できないままでいまだ建設中と言う事にされていた。

宇宙エレベーターで、宇宙の衛星軌道上に大量の物資を、

いつでも好きなだけ運べるという事は、

巨大な岩石を運び上げて敵国に落せば、

十分驚異的な破壊力を発揮する兵器になるのだから、

テロ組織の類に利用されれば確かに脅威であり、

軍事機密にすべきだという話にも納得できるが、

それ以上に各国政府の政治家の、

何らかの思惑があるように感じられる。

私は、集められた情報を元に兵器としての使用法を、

いろいろと想像することに着手した。

秘密組織だが、普通に朝出勤して夕方日の沈む頃には退社する。

秘密組織だからこそ何か、

特別なプロジェクトに参加しているなどと勘ぐられない様に、

定時に出社して定時頃に退社して、

たいした仕事はしていない振りをするようにと指導されたから、

本当は夢中になれば深夜まで研究室にこもりたいのを我慢して、

帰宅して妄想にふけった。

一流企業の一流の研究所だから、

二流の大学出の私は非常に目立つ存在らしく、

より注意するように言われている。

悔しい事ではあるが、

才能を認められて入社しているという思いがあるから、

気にしないことにしている。

「何でも作れる」-6

「それで、谷原博士はそんな政治家の動きに対抗して、

この秘密組織を作られたのですか」

「悪の政治家達は、私が手を貸さなくても、

他の研究者を騙して兵器の開発を進めるだろう。

そんな兵器に対抗する、何かを作り出すのが目的だが」

「何かをですか」

「そうなんだ、開発される兵器が、

どの様なものなのかの情報は、なかなか得られない。

だから、あらゆる場合を想定して、対抗策を考えるしかない」

「それは、かなり無茶な気がしますが」

「だから、五十嵐悟史さん、あなたの類まれな想像力が必要なのです。

ブログを拝見しました。

素晴らしい想像力だと思います。

しかも物理的に十分ありうる範囲で考え出された物語ばかりだ。

きっと、兵器についてもどの様な物が開発されるのか、想像できると考えました」

「そういう事ですか。

なるほど、学者としては二流だと思っている私なんかが、

一流の研究所でしかも秘密組織に入れてもらえるなんて、

不思議で仕方なかったんですが、必要なのは私の想像力ですか。

殆んど妄想ですがそれで大丈夫なのでしょうか」

「とにかく、五十嵐さんには思いつく限りの新兵器を考えてもらいたい」

「分かりました、頑張ります」

無事研究所員として就職を果たした私は、まず情報収集から始めた。

研究所の秘密組織では、

繊維を利用して作られているものについて大企業の持つ情報網や、

繊維の発明者谷原博士の権威などでいろいろなところから情報が集められていた。

谷原博士の話で驚いた、名古屋に完成しているという宇宙エレベーターは、

まだ完成したばかりで実用には至っていないらしいが、

完成した事は一般には秘密にされていた。

「何でも作れる」-5

「世界には悪徳では無い政治家も多少は居るから、

全世界が敵では無いと思いたいが、

あらゆる国、まあそれなりに国力がある国からは、

私に兵器の開発への協力依頼があったからな。

本当に平和を願っている政治家がいるのか不安になるよ」

と谷原所長は悲しい目をする。

「でも、たいていの政治家は世界平和を訴えていると思いますが」

と私は慰めるように言ったが所長の悲しい目は悲しいままだった。

「私の発明した繊維は、建築だけでなくいろいろなものの生産にも役立っている。

いろいろなものの生産効率が飛躍的に進歩した。

公共工事にかかる費用はうんと少なくて済むようになった。

さらに海や山は、繊維を使った橋やトンネルで繋がり世界中の行き来が簡単になった。

そして、従来の核ミサイルを無力化するような防衛システムが生まれていて、

いよいよ国家の軍事力による支配が危うくなってきている。

一般市民の中に国境廃止、国家廃止論が広まり始めていて、

従来の国家権力というものが失われつつある。

政治家はあせるだろう、

自分たちの権力がなくなっては政治家をやる意味がなくなってしまう」

「そうですね、政治家なんて皆、

それなりに権力欲があるから就く職業でしょうから、

権力が弱まるかもしれないというのが一番怖い事かもしれませんね」

「だからね戦争が必要なんだよ。

戦争そのものが無くても、

戦争が起こるかもしれない緊張感が必要とされている」

「政治家が権力を発揮できるのは、

経済や軍事的対立による戦争の危機や、

貧困や水とか食糧不足による困窮とかがあればこそと言う事ですか」

「新たな脅威を生み出したい政治家達は、

表向きの理由は敵対する国からの攻撃に備える為とか、

自国民を守る為とか自分たちが正義で有るという立場を貫いてはいるし、

本気で自分たちが正しいと思っているみたいだから厄介だ」

「何でも作れる」-4

「えっ、もうそんなものまで出来ているんですか、

確かにマスコミは殆んど報道してないですよね、

でも話題として飽きてしまったというより、

何かの悪意を感じますね。

今話しを聞いただけで私は凄く驚きましたから、

話題性がないというのは嘘でしょうし、

誰かが意図的に情報を隠蔽しているように感じます」

と私が驚いてみせると、谷原所長は満足げに頷いた。

「そう、何かの悪の組織が暗躍し始めている。

私もそれに気付いてこの研究所内に秘密組織を作ったんだよ」

「悪の組織ですか」

「そう、悪の組織なのだが。

普通、悪の組織と言えば反体制の組織を考えるだろう」

「はい、そうですね。

普通体制側にいる人は、現体制を壊す必要がありませんから、

破壊活動とかはやはり反体制勢力が行うものでしょう」

「だが、実際に存在した悪の組織で最悪なものは、

殆んど体制側の者達だよ。

ヒットラーにしても、植民地支配を行なった者達も、

大昔から人を奴隷として使うとか、人を生贄にするとか、

そんな事をしてきたのは体制側の権力者達だよ」

「確かに、国家も組織ですから、

そう考えると大規模な無差別大量殺戮は、

国家と言う体制側の組織が行なったものばかりですものね」

「つまり、今動き出しているのは、

軍事力で世界の権力や利権を手に入れようとする悪の組織、

つまり権力欲とか金銭欲にまみれた政治家達という事だ」

「なるほど、それで具体的にどの国か分かっているのですか」

「具体的にか。

私に接触を謀ってきた連中は、殆どの全ての大国にいる悪徳政治家達だよ」

「と言う事は、下手をすると全世界が敵と言う事ですか」

「何でも作れる」-3

谷原所長は少し考えながら

「そうですね、超高層ビルが、昔の十分の一の工事費で建てられる様になって、

特に後進国では超高層ビルの建設ラッシュになりましたね。

ですから、建物関係での利用は知っているでしょう。

では、他の利用はどうですか」

と質問してきた。

私も少し考えながら

「はい、建物以外にも、いろいろなものに加工しやすくて、

しかも硬化した後の硬さは掘削機械の刃の代わりにも使えて、

いろいろなものの加工技術も格段に向上したと聞いています。

トンネルの掘削に利用したトンネルマシンは、

従来のシールド工法の百倍以上の効率で、

百分の一以下のコストでトンネルを作れるようになったと聞きました」

と答えた。

すでに、地下鉄や地下道路網をはじめとして、地下貯水ダム、

さらに地下都市計画などのプロジェクトも進められている。

「そうですね、でもそれも殆んど建築関係ですね。

建築関係の最新情報では、完成したばかりだった東京スカイツリーは、

翌年横浜スカイタワー高さ三千mに追い抜かれ、

さらに今年名古屋に完成した宇宙エレベーター高さ三万六千kmに追い抜かれ。

この宇宙エレベーターは地球の静止軌道上に簡単に何でも運ぶ事が出来るから、

新たな宇宙時代を生み出す事になるはずのものなのだが・・・・」

「宇宙エレベーターってもう完成していたのですか」

「やはり、知らなかったか。

繊維が大量生産されて、大きな建造物が簡単に生み出せるようになったせいで、

毎日のように世界一の塔とか橋とかが生み出されて、

最近ではマスコミも殆んど取り上げなくなったからね。

実の所すでに、

太平洋上と大西洋上に繊維を編みこんで強化した壁で守られた橋が完成して、

世界の大陸が全て地続きとなっているんだよ。

宇宙都市もいくつか完成し、宇宙移民が始まるという話も聞いている」

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