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「さまようコンビニ」-5

 彼女の家の前でしばし躊躇していたが、

やはり会った所で仕方が無いし、

勇気を振り絞って適当な口実を作り出して家を訪ねても

彼女が居なければ全て徒労に終わってしまうと考えて、

さてこれからどうしようかと迷っていると、

目の前の家から女性の声が聞こえた。

「父さん、もう死んで頂戴。お願い」

 目の前の玄関横の窓の内側からだ。

それに答えるような声は聞こえない。

テレビの声かもしれないと一瞬思ったが、そうではない気がした。

暫らくして、「御免なさい」という呻きにも似た声が聞こえて、

はっきりとそこに居る人の声だと分かった。

 悪い予感がした。

直ぐ目の前に有ったドアホンのボタンを押す。

 家の中からピーンポーンと少し間延びしたチャイムの音がひびく。

 玄関横の部屋で人が動く気配がする。

ドアホンから「はーい」と声がする。

しまったと思う、何も口実を考えついていなかった。

だが女性の声だということに気がついて、

ならば千恵ちゃんだろうと考えて、普通に自分の名前を名乗る

「田所健二です」すると「はい、少々お待ち下さい」と返事が有った。

 やはり千恵ちゃんなのだろうと思い、

死んで頂戴という言葉が彼女から発せられたのだとしたら、

何があるのだろうと考える。

楽しい再会にはなりそうに無い予感。

 玄関が開けられて姿を現したのは、

少し年をとって老け始めているが、千恵ちゃんに間違いなかった。

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