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「さまようコンビニ」-8

 何も言わずじっとしている千恵ちゃんに、

これ以上なにを話しても無駄だと思い、

最後にひとつだけ質問した。

「さっき、この家の前に着いた時、家の中から、

父さん死んで頂戴と言う声が聞こえたんだけど、

何か困った事があるなら話してくれないか」

 千恵ちゃんは急に怒りをあらわにした。

「人の家の前で立ち聞きですか、たぶんテレビの声ですよ、

死んで頂戴だなんて縁起でもない。

父は病気でずっと寝たきりなんですから、もう帰って頂戴」

と最後は語気を荒くした。

 私は仕方なく千恵ちゃんに背中を向けて玄関の外に出た。

外に出て振り返り最後にもう一度千恵ちゃんの顔を見てから玄関を閉めて、

これから今日はどうしたものかと考えた。

 背後が少し明るくなったのを感じた。

振り返るとそこには消えたはずのコンビニがあった。

急いでコンビニの店内に戻ると、

私が使っていた買い物カゴがレジ台の端に迷惑そうに置かれていた。

誰もいなかった店内には店員だけでなく他のお客も何人か居る。

 私は慌ててレジに向かい、

端に寄せられていて買い物カゴを、レジの側に置いた。

支払いを済ませて外に出ると、そこは私が住みなれた町だった。

     ★

 私には父を殺す事なんて出来なかった。

父の首に手をかけて絞めるつもりで

「父さん、もう死んで頂戴。お願い」と言ったのに、

いざ絞めようと、力を込めようとしても力が入らなかった。

無理だと悟って泣いている時に、玄関のチャイムが鳴った。

 まさか健二さんに話し声を聞かれていたなんて、

それに突然彼がやって来た理由も良く分からない。

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