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「幸運Ⅱ」-13

 受付で適当な理由をつけて入管許可を取る事は出来るかもしれないが、

俺達が入り込んだ証拠が残ってしまう。

初めての者には身分証明書の提示が義務付けられてもいた。

 俺はさんざん迷った末、強行突破することに決めた。

俺と今井はフルフェイスのヘルメットで顔を隠し、

入り口から出会う人間全てを眠らせて重役室へと一気に向った。

 組織最高幹部の重役室の扉は分厚くて重かった。

ドアを開くと目的の幹部は椅子に座ってぼんやりとしていたから、即座に眠らせた。

 行動は素早く済ませなくてはならない。

たぶん警備室では警備員達が監視カメラの映像で建物内の異常に気付き

行動を起こし始めているだろう。

警察が呼ばれれば何かと面倒な事になる。

 幹部が運良く使用中だったパソコンで、

組織についての情報を持ってきたメモリーに移し込む。

今井孝彦が側にいるとなぜか全ての作業がとてもスムーズに進められた。

 データーを取り出したパソコンにいくつかの偽情報を入力する。

バックアップがあるかもしれないから

ウイルスソフトでパソコンを攻撃するような事はしない。

間違った情報が入っている事に気付かれないように、

偽情報は少しだけにしておく。

パソコンのデーターがいじられた事に気付かなければ、

バックアップのデーターに直ちに入れ替えるなどと言う

手間のかかる事はしないだろう。

そして間違った情報で連絡を取り合えば、

組織は壊滅的な損失を受けることになる。

「幸運Ⅱ」-12

 俺達はまず昔の仲間のもとを尋ねた。

今は組織内でも一匹狼の俺だが、

初めから一人で行動していたわけではない。

始めは革命運動家仲間と共に、

学生運動の延長から秘密組織に拾われて仲間と共に加わった。

その後俺は自分の能力に目覚め、

仲間から離れて単独行動を取るようになった。

 昔の仲間達は、俺と違いある程度のグループで活動していて、

俺が持つ情報以上の多くの情報を持っていた。

仲間の一人を訪ねて昔話をしながら途中で相手を眠らせて、

持っていた携帯電話の情報をいただき、

家の鍵を拝借して合鍵を作り後日自宅に侵入してパソコンのデーターを盗み見た。

 上層部のメンバーが分かると、そのメンバーの元を訪れて、

気付かれないように眠らせて、携帯やパソコンからデーターを盗み出す。

 たぶん俺一人で行動していれば、

途中で誰かに怪しまれて俺は組織から追放されただろう。

しかし、今井の幸運の前には誰も逆らえないらしく、

組織に関する情報は面白い様に手に入った。

そして、一月ほどで最高幹部クラスの情報が手に入り、

いよいよ組織解体へと動き出す事にした。

組織が指定した次の仕事の実行日が迫っていた。

 入手した組織の最高幹部の情報では、

一人はある大企業の幹部、

また別のある一人は国政に携わる行政機関の上層部に居る事になっていた。

 大企業の重役室への潜入はかなり困難なものだった。

企業の本社ビルは部外者立ち入り禁止で警備が厳しくなされていて、

IDカードなしでは入り口から先へ進む事は出来なかった。

「幸運Ⅱ」-11

 俺は、今井に全ての事情を説明し協力を要請した。

「五十嵐さんの能力が、催眠術ではないというのは何となく気付いていました。

しかし、秘密組織のメンバーだなんて、

それも世界をひっくり返そうとするような組織のメンバーだったなんて」

「信じられないですか」

「いえ、でも確かに数年前の妹の結婚式の日の話には何となく真実味がありますね。

確かにあの日、洋上で大国の爆撃機が墜落した事件が有りましたから、

しかもわが国のどこかを爆撃しようとしていたというので騒いでましたから」

「その、爆撃されようとしていた施設が、妹さんが結婚式をしていた施設で、

式の最中に爆撃する予定だったのです」

「もしかして、それであの日あの場所に居たのですか」

「実はそうなんです」

「もしかして、僕らが逃げ出さないように眠らせる為ですか」

「はい。そして、今井さんの運の良さの前に計画は失敗に終わりました」

「何と、それで結局途中で改心して、何もせずに帰ったという事ですか」

「まあ、改心しました」ちょっと嘘をついておく。

「そうでしたか、そしてまた組織が新たな戦争を起こそうとしているのですか」

「はい、今井さんの幸運の力で、組織の犯行を阻止したい。

そして、秘密組織を解体したいのです」

 今井は、思ったより簡単に協力を承諾してくれた。

翌日から組織に対する調査を開始した。

元々持っていた情報はわずかなものだ、

メールの送信元に関するわずかな情報、

金の振り込み元のわずかな情報、

そして、昔一緒に活動していた仲間の情報。

「幸運Ⅱ」-10

 文末の1000は成功報酬額だ。

一千万が成功報酬。

失敗しても実行に移していれば半額の五百万、

何もしなくても手付けの二百万が振り込まれる事になる。

報酬額から考えて今回の仕事は

前回の一般人を眠らせるというものより危険だという事だ。

 俺の能力は人を眠らせること。

送られてきた住所の場所に行き、

指定された時間にその場所にいる人間を眠らせるのが俺の仕事だ。

 二通目三通目のメールで住所と時間を確認し、

ネットでその場所を確認する。

今回は防衛施設なのだと分かる。

直ぐに最近の世界情勢を調べ、

俺独自の情報屋と連絡を取り、組織の計画の全容を把握した。

 組織はまたもや一般人に多くの犠牲者を出させて、

大国の政府転覆を図るつもりのようだ。

だが、今の世界情勢では我々のような組織が、

罠を仕掛けない限り戦争も扮装も起こらないように思える。

 無意味な戦争や紛争を起こして金儲けをしている、

軍事大国を滅ぼすのが我々組織の使命だった。

しかし、現実には組織こそが戦争や紛争を起こしている。

俺は大いに矛盾を感じ、組織に対して反感を抱いた。

俺は組織を解体する事にした。

 かなりの秘密主義の組織は、

根幹となる連絡網を破壊すれば二度と再生出来なくなるだろうと考えた。

俺の能力だけでは到底組織に対抗できないだろう。

しかし、今井孝彦の幸運の能力がプラスされればきっと組織をつぶす事が出来る。

そんな確信を持った。

「幸運Ⅱ」-9

 今井が客の悩みを聞き、セラピストとして上手いアドバイスを行う。

俺がどんな不眠症の客でも瞬時に眠らせて、

今井のアドバイスに真実味を持たせる。

人間なんと言っても信じる事が大きな力になるようで、

どんな不眠症の患者でも俺達の手に掛かれば症状が解消した。

 客の評判もよいから口コミでどんどんお客も増えたのだが、

残念なのは今井の知識は弟子に伝える事が出来ても、

俺の催眠能力は誰にも伝授出来ないという事だ。

だから、手伝いをする人間を雇う事は出来ても、

実際に治療を行えるのは今井と俺のペアだけで、

結局多角経営とか多店舗経営いうわけには行かなかった。

 成功しても大成功はしない。

まさに今井の運の良さのレベルにぴったりの状態だった。

大成功ではないけれど、成功しているからそれなりに高収入で、

生活レベルは以前よりかなり良いものになった。

 儲かっているけれど、その分忙しい日々で、

自分が所属している秘密組織の事などもすっかり忘れて楽しく暮らしていた。

そんなある日の事だ、組織の上司からメールが届いた。

 メールは特別な暗号など使わない。

しかし、俺以外の人間が読んでも意味が分からないだろう。

俺の役目を知っていなくては、

何をするのかは書かれていないのだから分かるはずが無い。

『××県○○市○○町七―六―五。○月×日十三時0分。1000』

とだけ書かれたメール。

○や×にはちゃんと文字が書かれているが、

別のメールで送られてくる文字に入れ替えて始めて意味を成す。
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