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「金持ちになった男」-3

「真田君、えーっと、真田君」

と部長が私を呼ぶ声に気付くまで、

どれくらいの時間ぼーっとしていただろう。

「あ、はい。すみません」

そう言って慌てて席を立ち、部長の前まへと急ぐ。

「はい、何でしょうか」

「あん、何をぼんやりしてたんだ、とっくに始業時間は過ぎているぞ。

そんな事だから部下からもなめられるんじゃないか、しっかりしたまえ」

「はい、申し訳ありません」

と頭を下げて立ち去ろうと後ろを振り向くと

「まだ話は終わっとらんぞ」と低い声で静かに、

しかしきつい厳しい響きの声で呼び止められる。

「はっ、済みません」と振り向いてもう一度頭を下げる。

 仕事を言いつけられて席に戻ると、

部下の一人が側に寄ってきて「お疲れ様です」

といって微笑む。

彼いわく、部長は平社員を直接叱れない分を

課長にぶつけて鬱憤を晴らしているだけだから、

あまり気にしない方が良いそうだ。

自分の部下に慰められている課長と言うのは、

たぶん部下からすれば頼りないだろう。

頼りないはずなのに、

本来自分達へ向うはずの部長の叱責が課長にだけ向っているから、

助けられていると感じているらしい。

 部下からはどんな形でも頼られているのだろうから、

こんな状況でも課長としての役割は、

果たせていると考えて良いのだろう。

たぶん、そうなのだと言い聞かせる。

かなり違う気がするから、無理やり言い聞かせる。

深層心理までは誤魔化せないから、

少しずつストレスとして溜まっている気もする。
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