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「広い家に住む為に」-3

 私は、高校を卒業して直ぐに、郊外の大きな工場に就職した。

世間知らずだったから、働くとなると働く事以外には、

何も考えずに真面目に働いた。

最初の二年間は社員寮と工場との往復で一日一日が過ぎて行き、

その事にたいした疑問も持たずに生きていた。

 高校を卒業して親元を離れるまでずっと貧乏な暮らしだったから、

お金を使うことも良く知らなかったと思う。

その頃の毎日は大しておもしろい事も無かったけれど、

大して刺激のある生活でもなく、坦々と過ぎて行ったようで、

今となっては殆ど思い出らしい思い出も無い生活だった。

 当時としては長い二年間だったはずだが、

今思い返すとあっという間だった様に思う。

工場で働き始めて二年が過ぎ、二十歳を過ぎて酒も飲めるようになると、

先輩に誘われる事も多くなり、

世の中というものが少しずつ分かるようになって、

遊びというものも覚え、二年間で多少出来た蓄えを直ぐに使い果たしてしまった。

それでも、入社三年目に入り人並みに給料をもらえるようになっていたので、

蓄えは出来ないものの、借金で苦しむ事も無く何とかやっていた。

 今思えば二十歳からの三年間が一番幸せな期間だったかもしれない。

若いから老後の心配だとか、病気で働けなくなったらと心配もしないし、

金持ちでもなければ出世もしていない状況でも、

若いから当然と思えたから、悔しさも惨めさもまったく感じていなかった。

むしろ遊びも知らなかった昔の自分と比較して、

良い生活を送っていると思えていたから、自分の現状に十分満足していた。
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