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「広い家に住む為に」-23

 初日はコピー機の扱いや、お茶汲みの方法手順を教わり、

昼食の取り方から、休憩時間の過ごし方などを教わり、

三時の休憩で先輩に教えられながら、

事務所に居た十名分のコーヒーと社長には特別のお茶を淹れて届けた。

午後四時には配ったカップや湯飲みを回収して後片付けを行い、

それが終わってやる事無く椅子に座っていると、

先輩から定時は五時だから、今日はもう帰って良いと言われ、

一日の仕事を終えた。

 一日分の仕事としては頼りないし退屈すぎるものだけれど、

以前の会社での事務仕事と言うのも同じ以上に退屈なものだったから、

これが普通なのだと思った。

 翌日から事情が一変した。

朝の掃除とお茶くみが終わると、課長と言う人がやって来て、

ワープロ原稿を作れと言い出した。

私はパソコンのキーボードに触れた事も無いという事ではなかったが、

殆どキーなど叩いた事がなかったから大変だ。

しかも文章も考えてくれと言われ、参考文書と数種の原稿案を渡されて、

お客への説明文を考えて書いてくれという。

もちろん私にそんな経験などないから、完全に困窮してしまった。

 それでも先輩に相談し、パソコンの操作方法を教えられ、

午前中で何とか文字は打てるようになった。

問題は、文字が打てても、時間がかかってもかまわないとしても、

文書を考えつかないという事だ。

 昼休憩が終わり、考え続け午後三時の休憩が終わっても殆ど進んでいない。

午後五時を過ぎても目途すら立たずに居ると、

先輩が多少アドバイスをくれて、

少しは文章らしきものを書き始めた。

誰も帰って良いとは言わないままに、午後七時過ぎにぽつぽつと先輩達が帰り始める。

専務が帰りがけに私の姿を見つけて、

「新人は残業しても手当ては出ないぞ」と一言言って出て行った。

 私に仕事を依頼した課長は午後九時になって、

「書類は明日の昼まででいいよ」と言って帰っていった。

 昼までで良いよと言うのは、

明日の朝仕上げれば良いよと言う意味だろうけれど、

今の状態で明日の朝出社して仕上げて間に合うとは思えないから、

とても帰るに帰れない。
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