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「永田町」-9

 炎が眩しい窓とは反対側の出入り口に向おうと歩き出すと、

その出入り口の扉が何かに押し倒される。

そして、火だるまの人間が転がり込んで来て倒れた。

 もはや出口は無くなっていた。

僕も死んでしまうと思い深呼吸して目を閉じた。

 周囲が一旦静かになる。

そして、少し前の騒がしさが周囲に押し寄せてくる。

 ゆっくりと目を開けると、屋上に向う学生達が出入り口に向う所だった。

食堂の中を見回すが、トモちゃんの姿は無かった。

「屋上に行ってみないか、テレビで見ていても何処まで本当なのか良く分からん」

と言う近藤の腕をつかみ、有無を言わさずに食堂を飛び出した。

「そんなに急がなくても。おいおい、屋上はこちだぞ、階段を登らないのか。

外に出て何をするんだ。なんだよ、どこかもっとよく見える場所を知っているのか」

「ああ、急いでついて来い」そう言って後は無言で校舎から離れ、

グラウンドの真ん中まで走り、校舎を振り返った。

 大型のプロペラ機が機首を真下にして校舎の屋上に突っ込む所だった。

飛行機はたぶん自衛隊の哨戒機か何かだろうと思う。

 校舎の屋上に衝突し炎上し校舎を炎で包み込んでしまう。

もしあの場にいれば僕も近藤も炎の中で死ぬのを待つ事になっただろうと考えて、

ぞっとする。

「山田、お前」と言って、燃え盛る校舎の炎に圧倒されて、近藤は口をつぐんだ。

 言いたい事は分かる。まるで飛行機が墜落する直前に、

その事を予知したような行動だった。

だが、僕は実際に飛行機が墜落した校舎の中で、焼け死ぬ直前を体験している。

そういう記憶がまだ残っている。

なのに、実際には飛行機が墜落する前に校舎を飛び出している。

 僕の記憶は実際に体験した事なのか、予知夢の類だったのか、

良く分からないが、九死に一生を得た事だけは確かだと思う。
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