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「永田町」-37

 恐怖で足がすくんで動けなかった。

だから、じっと睨み返すしかなかったのだが、魔王は何か誤解したみたいだ。

「生意気な、ならばもう一度恐怖を味わうがいい」

 魔王は手にしていた瓦礫を僕に向って投げつけた。

今度こそ死ぬのかと思い直ぐに目を閉じて覚悟を決めた。

 何も起こらなかった。

 目の前に魔王が居て僕をにらみつけていた。

その薄気味悪さがいけなかったのだと思う。

魔王は嘘をついている、魔王に僕を殺す事は出来ないという思いが頭に浮かび、

何か勇気のようなものが生まれたのかもしれない。

もう、じっとしていられなくなった。

 僕は何が何だか分からないままに、魔王に向って突進した。

 魔王に向っていたはずなのに、石の壁にぶつかってぶっ倒れてしまった。

そこに魔王は居なかった。


 壁は国会議事堂の壁だった。

 いきなり走ってきて壁にぶつかって倒れた僕を不審に思った警備員が飛んできて、

警備室で取調べを受ける事になった。

 もちろん、魔王がどうしたこうしたなどと馬鹿げた話はしない。

魔王が消えて国会議事堂が現れた時点で、全てがリセットされたのだと分かったし、

それと同時に魔王に関する記憶も僕以外の人達からは消えたかもしれないと思いついたからだ。

「なぜかちょっと走り出したくなりまして、走り出したら止まらなくなりまして、

その、済みませんでした」

「本当にただそれだけなのか、何だって走り出したくなったんだ」

「たぶん、その、広場が広々としていたので、ちょっと気分が高揚したのだと思います。

議事堂の立派な建物を見て興奮したのも有ると思います。本当に済みませんでした」

「まあ、怪我も無い様だし、反省もしているようだから、

まあ今日のところは釈放するけれど、

あんな所で走り回ればテロ行為とみなされて場合によっては本当に逮捕だからね、

以後本当に気をつけるように」

 警備員からしっかりと注意を受けて釈放され帰宅した。

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