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「帰宅物語」-②

会社に戻る事も考えられたが、会社に到着する頃には勤務時間も終了しているだろうから、

いずれにしても帰宅する事になる。

会社まで行けば会社の車で帰れるとは考えもしなかった。

自宅までは、東に真直ぐ直線で7~8kmで曲がりくねっても10km程度と考えた。

元気な男なら時速5kmで歩けるから、2時間で到着するはずだと甘い考えをしてしまう。

元気なのはせいぜい2km程度までで、

それを過ぎると普段運動していないK氏は疲れはててくる。

歩道は歩く為の道なのに、車が出入りするための傾斜がいたる所に付けられていて、

進行方向に対し、右や左に傾斜して人の足を痛めつける。

直ぐ横の車道は綺麗に舗装されて平らなのに、バリアフリーが言われ、車椅子でも

通りやすく考えられなければならないはずの歩道は、がたがたで傾斜と段差だらけだ。

だから、3km過ぎると靴擦れで足が痛み始める。

さらに、普段歩いた事のない道である。車が走る為に便利に作られた道は、

立体交差などでは車は最短距離を走れるのに、人が歩く場所は、

わざわざ遠回りで道に迷うような迷わせるような、造りになっているから、

当然K氏は迷いに迷ってうろうろする。

さらに、足が痛くてたまらないから、楽がしたくて近道を探して行き止まりで舞い戻りを繰り返し、

ただ、おおむねの方向だけは合っていたから、徐々に自宅には近づいていった。

自宅までの半分の距離を過ぎた当たり、歩き始めて2時間近くたった頃には、

同じように徒歩で自宅を目指す人の隊列が出来て、幹線道路沿いであれば、

もう道に迷う事は無くなった。

途中のコンビにはすでに近所の人が全て買い占めたのか、

飲料とか食料はわずかしか残っておらず、

停電で使えない自販機の扉を開けて販売する店なども出始めていた。

K氏も何とか缶コーヒーを一缶手に入れることが出来て、

のどを潤すがまた直ぐにのどが乾いてくる。

途中の公園で一休みして靴擦れの度合いを確かめ、なんとも仕様が無いことだけ確認して、

また歩き始める。

日が沈み始め、たそがれ時を迎えても自宅近くの景色は見えてこない。

行き来する車のライトで幹線道路はまだ何とか明るさを保っていた。

行き来する車と書いたが、郊外に向う車は大渋滞で歩くのとほぼ同じ速さでしか進まず、

都心に向う車は渋滞するほどではないが信号が消えている為信号ごとに安全確認していて

なかなか進まないようだった。

ところどころにソーラー発電しているのか家の明かりや表示灯の灯りが見えるようになるくらい

暗くなった頃、やっと自宅近くの見慣れた建物が遠くに見えてきた。

ソーラーの自家発電で共有部分の照明を点灯させている高層マンションは、

あたりが暗い中でより際立って異様に見えた。

K氏が自宅近くに帰りついたのはもう午後の6時過ぎだった。

いつも行くミニスーパーはやはり停電していてレジが使えないから半分閉店状態で、

それでも需要の高い非常食としてパンと飲料だけ手売りしていたのだが、

パンは食パンしか残っていないし、飲料もブラックの缶コーヒーぐらいになっていた。

自宅の買い置きの食料の方がマシだと思い、何も買わずに帰宅する。


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