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「夏の盛り」-5/5

ふと気が付くと、列車の中だった。

車窓からは空しか見えない。

しかも、夜空であり星空だ。

乗客は自分以外誰も見当らない。

まだ夢の中にいるのだろうか、それとも。

訳が分からないから何も考えられない。

ただ、この世のものではない景色の中にいることだけは分かる。

列車はやがて、どこかの駅に到着する。

終点のようだ、降りなければと思う。

どうやらあの世に来てしまったのだと理解するが、

はたしていつどこで死んだのだろう。

やはり、あの海岸で日射病で倒れてそのままという事だろうと思う。

それにしてもなぜ誰もいないのだろう。

そういえば今日、電車に乗ったとき周りにいたのは、

本当に生きた人間だっただろうか。

あの人達の方が、幻覚だったのではないかと思い始める。

突如として、肩をぽんぽんと叩かれる。



巧妙な罠にはめられたことには、なかなか気付かなかった。

しかし、気付いてもどうしようもなかった。

罠にはめられたという証拠がないからだ。

罠は巧妙だった。

仕事でパソコンに向っている社員にメールを送り、

会社のHPのあるサイトに誘い込む。

そのサイトを見て、その文書を読む事で催眠術にかかる。

催眠術にかかった私は、会社員であることも忘れ、

休日を楽しむための計画をパソコンを使って行なう。

これが問題で、仕事中に仕事をさぼって遊びに行く計画を、

会社のパソコンを使って立てている。

しかも、勤務時間中に会社のパソコンを遊びに使ったという証拠が残る。

言い逃れが出来ない状態を作ったうえで、

さらに勤務時間中に居眠りをさせる。

電車の中でうとうとしたのは、本当にうとうとしていたようだ。

そして、完全に眠りこけた所で、肩を叩かれる。

会社のリストラ策だ。

しかも、懲戒解雇にして退職金も支払わない。

肩を叩かれて目覚めた時、

死んではいなかったと分かり喜んでしまったことが悔やまれる。

大不況のさなか、退職金も無しで会社を首になった中年男は、

もう死ぬしかないからだ。

でも死ねないから、

どこかを彷徨い歩くホームレスになってしまうだろう。

-END-




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意外なおちでした。
予想外で面白いですね
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