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「無敵なヤツ」-1/4 

大陸の広い台地を、縦横に適当に線引きをした国境によって出来たこの国では、

適当な線引きが生み出した、矛盾と無秩序に支配され、

独立以来内戦が止むことが無かった。

隣国との民族紛争や、宗教戦争が加わり、

過酷な内戦は熾烈さを増す一方だった。

国連軍が介入するも、現地のテロ組織に襲われて、

狭い活動拠点から動く事さえままならない状況で、

平和などという言葉さえ忘れ去られていた。

小さな子供からお年寄りや女性までが、何らかの武器を携帯し、

自らの身は自身で守るしかない、敵は誰なのかもよく分からない世界だった。

敵は、親の仇か、恋人か妻か夫か子供か親友の仇だから、

決して許す事が出来ない。

だから、内戦を終わらせる事など誰にも出来ないと、誰もがあきらめていた。

そんな国だから、ヤツは自分の出番だと考えた。

ヤツは完璧なまでに無敵だった。

無敵と言っても、敵対する人間がいないと言う事ではもちろん無い。

あらゆる攻撃がヤツには効かないという意味だ。

あらゆる攻撃が、彼の肉体に到達する前に無効化される。

物理的な攻撃はもちろんの事、化学的な攻撃も無効になる。

たとえば、ヤツに殴りかかっても、拳の勢いがやつの体に触れる直前に、

ヤツに少しのダメージも与えないレベルに弱められる。

レザービームの類でも、ヤツの体に到達する前にただの明るいだけの光になる。

ミサイルも当たらないし、当たりかけて爆発しても爆風は、

ヤツの手前でそよ風に変わる。

毒物もヤツには効かない、体内に入ってしまう前に

体への有害性が殆ど消えてしまう。

病原菌ならばと思うかもしれないが、

入り込めた病原菌が体に害を与えようとしても、その前に無力化されてしまう。

それならば、密室に閉じ込めて窒息させればどうだと考えると、

やつを閉じ込める事が殆ど不可能で、たとえば鉄の箱を上からかぶせても、

ヤツが鉄の壁に体当たりすれば、ヤツの体が傷つかないように、

鉄の壁がヤツを避けて穴が開いてしまう。

ヤツは閉じ込める事も、炎で焼く事も、感電させる事さえも出来ない、

そんな無敵だった。

ヤツは、内戦の続くこの国に、突如として現れた。



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