fc2ブログ

「旅のまにまに」-3

小さな市の郊外、人気の無い道路沿い、車もまったく通らないような場所。

目的の場所は、夜間でも相手の顔が分かるように街灯の下が選ばれる。

知らない若い男が一人立っている、相手はヤツだろうか。

近づいて声をかけてみる。

何かイチャモンをつけられたとでも思ったのか、相手はこちらを睨みつけてくる。

こちらも負けじと睨み返す。

暫らくのにらみ合いの後、ヤツがいきなり殴りかかってきた。

それを軽くかわして、こちらもファイティングポーズでかまえると、

暗がりから数名の若い男たちが現れる。

周りを囲まれて、こちらは完全に戦意を喪失し、

何なら土下座しようかというほど縮こまっていると、

囲みが狭まり背後から押され、前に進むと前から押され、前後左右に翻弄される。

暫らくすると数台のバイクと車がやってきて、一台の乗用車が直ぐ近くに停車する。

車の後ろのトランクが口をあけると、周りを囲んでいた男たちが、

俺を数人がかりで担ぎ上げて、車のトランクに押し込んだ。

俺の旅は、この車のトランクで終了。



高層ホテルの一室で、高性能双眼鏡で外を見ている男女が居た。

「どうです、彼はもう海に沈むか、山に埋まる運命ですよ」

男が横で双眼鏡をのぞく女に話しかけた。

「そうなんですか、どこかに連れて行かれて暴行されて、

そのまま開放されるんじゃないですか」

女はまだ満足していない様子で聞き返した。

「車のトランクに押し込めただけで、直ぐに開放するはずが無いですよね。

そして、暴行した相手をそのまま解放すれば、

今度は自分たちが警察に追われることになる事ぐらい彼らは分かっています」

「そうね、でも」

「だから彼らは、暴行した相手が警察に行けなくする必要がある。

そしてその方法は、何かで相手を脅すか、始末してこの世から消し去るかです。

ヤツを脅しても無駄って思うでしょうから、残る方法は1つしかありません」

「そういう事になるのね」

「そうです。あなたも夜道の暴走族には十分注意してください」

「ああ、車が走り去ったわ、ヤツが始末される所は見れないのね」

「ええ、残念ながら、彼らがこれからどこに行き、

どこで事を済ますかまでは、我々にも把握しきれませんから、

それは御勘弁願いたい。

ただ、今後ヤツが警察沙汰にしなければ、生きていればするでしょうから、

しなければ、目的は達せられたと考えて良いでしょう」

「そうね、確かに」

「ですので、成功報酬の300万円は1ヶ月以内に支払っていただければ結構です。

一月以内にヤツが警察に訴えなければ、ね」

「分かりました、1ヶ月も待たなくて結構よ、一週間経って確信がもてれば支払います」

「ありがとう御座います」


コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

No title

おお、怖い。でも、世界の片隅で、こんな遣り取りが罷り通っているんでしょうね。冷静過ぎる処が、リアルで怖いですね。
フリーエリア
カレンダー
01 | 2024/02 | 03
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 - -
リンク
最新記事
カテゴリ
最新コメント
検索フォーム
QRコード
QRコード