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「赤ん坊の頃の想い出」-2

父との良い思いでも、あるはずなのに。

なぜ今、忘れ去ってしまっているのだろう。

何時頃からか、酒に酔って暴れる怖い父親のイメージしか思い浮かばなくなっていた。

しかし、よくよく考えてみれば、自分がまだ幼い頃には、父は真面目な会社員で、

父の帰宅を楽しみに待っていた時期もあったはずなのだ。

叔母さん、父の妹から聞く話では、父は子煩悩だったし、

赤ん坊の私をとても可愛がっていたらしい。

そんな父がなぜアルコール依存症になったのだろうと思う。

よほど辛い何かがあったのではないかと考えてみる。

たしか、父が二十歳の年に終戦を迎えたのだ、

父の青春時代は辛い時代だったはずだ。

軍隊にも入っていたらしいが詳しい話は聞かずじまいだった。

父と、父の兄弟が疎開していた話や、

母は家が貧しくて、母の父親が戦死してからは、

母の母親を助けて幼い兄弟を養っていた話などは、聞いたことがある。

けれども、戦争そのものの話や、父が軍隊でどの様に過ごしていたかは、

聞いたことが無かった。

叔母から父は、軍隊で飲めない酒を無理やり飲まされたという話を

聞いたことがあったが、軍隊の話はそれだけで、それ以外は聞いた事が無かった。

きっと、とても辛い思い出だったのではないかと思う。

とても自分の子供には話したくないと思う経験だったのではないか。

そう考えた時が、父を嫌う気持ちがすこし和らいだ瞬間だった。

告別式後の挨拶は滞りなく済ませることが出来た。

我ながら良い話が出来たと思う。

自分にもし子供がいたならば、どう思われるだろう。

甥っ子が高校時代には、まだ叔父である私との良い想い出はある様子だった。

大学を卒業した現在はどうなのだろう。

人の想い出なんて、曖昧なものなのだろう、

ある筈のない赤ん坊の時の想い出がありながら、

父との幼い時の良い想い出は、なくなってしまっているのだから。

-END-

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