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「散歩の神様Ⅱ」-1 

東京では、初冬12月初旬気温はかなり下がってきたとは言え、

まだ昼間はコートなど邪魔になる暖かさが残っているから、

昼休みの散歩にはうってつけの季節だと感じる。

マユミは、昼食後の数十分の自由な時間を、

暖かそうな陽射しにさそわれて、散歩に出かけていた。

仕事場の近くの公園には、食後の散歩を楽しむ人が、数人のんびりと歩いている。

マユミは公園の中の遊歩道から、芝生の中に足を踏み入れて、

草と土の軟らかな感触を心地よく思う。

芝生の周りの所々に植えられている、つつじの固まりの根元に、

手紙を見つけて拾った。

手紙には、宛先が書かれていたが、差出人の名前などは書かれていない。

宛先の住所を見ると、この公園の近くの神社になっていたが、

その時は昼休みの終了時間が迫っていたので、そのまま手紙を持ち帰った。

仕事に戻ると手紙のことをすっかり忘れてしまい、

カバンに入れていた手紙をそのまま自宅に持ち帰った。

帰宅していつものようにカバンから、携帯と財布を取り出して

テーブルに並べ、手紙に気付く。

手紙は封がしてあったけれど、剥がれかけていて、

ためしにそっと剥がしたら簡単に開いた。

いけない事と思いつつも、何となく興味を引かれ、

中身を取り出して読んでしまう。


”かねてより相談の子供、両親の願い聞き入れたいが、

その子の病は重く、すでに運も尽きようとしている。

お主の申すとおり、助ける方法が無いではないが、

策を講じても助かる率は低い。

その上、別の者の身体に関わる方法ゆえ、

あきらめて貰うが良かろう。”


マユミは、手紙を読み終えて考えた。

このまま手紙を届けたら、子供は死んでしまうのだろうかと。

自分が手紙を届けた事で、子供が死んでしまうとしたら、とても嫌だ。

けれど、届けなければ、やはり宛名の神様は何もしないで、

子供を見殺しにしてしまうかもしれない。

手紙は神様宛だから、毛筆で書かれていても良さそうなものなのに、

なぜかワープロの楷書体でプリントアウトされたものだった。

自宅のパソコンとプリンターで簡単に偽物が作れるから、

マユミはとても悪い事だと思いつつも、内容を少し書き換えた手紙を書き、

中身を入れ替えて、翌日の昼休みに、散歩のついでに届ける事にした。

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