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「私の勝手でしょ」-3

先輩は、社長の息子に水を飲ませ、ケチャップをふき取り、少し酔いを醒まさせながら、

「君が彼をさしたのを覚えているか」と尋ねる。

「覚えていなくても君が指したことに間違いない」と言って、

「酔った上での喧嘩だったのだ」と慰めながら、息子の責任と認識させる。

そして、俺が後始末をするから、2人はそっと逃げ出せと言い、

私は社長の息子を連れて、外に出る。

翌朝、待ち合わせて三人で会い、昨夜の殺人の顛末を確認する。

ただし、遺体の始末についての詳しい話などは、一切教えない。

社長の息子には、自分が人を刺したというニセの記憶と、

それを先輩がかばったのだという記憶だけが植えつけられる。

作戦は、一応上手く行った。

社長の息子は、人を殺したかもしれないという不安から、

うつ病になり引きこもり気味らしく、その後私との連絡も絶ったままだ。

しかし、先輩が就職する時には、息子が親友として父親に働きかけてくれた。

うつ病で引きこもりの息子は、

私の就職の時には何の役にも立ってくれなかったから、

苦労させられたけれど、何とか入社できた。

入社式から暫らくは新人研修で、新入社員ばかりで行動していて、

先輩と会う暇も何も無かった。

一月ほどして、配属先が決まり、同時に春の人事異動も発表された。

先輩は、今年から地方の工場の製品開発担当として転勤になっていた。

私は本社の総務課勤務、年に一度くらいしか会えない事になってしまった。

それから数年の間、たまにメールのやりとりの関係が続き、平凡な日々を過ごした。

私ももう先輩には固執しなくなったし、新しい恋人も出来たり分かれたりしていて、

先輩との結婚なども考えなくなっていた。

そんなある日、先輩からメールが届いた。

人事査定の評価表をコピーして送ってくれという。

先輩の頼みだからそれぐらいならと思い、こっそりコピーして送ったあげた。

数日後にさらに要望が届いた。

自分の人事評価を低く採点している部長を失脚させろと言ってきたのだ。

まさか私にもそこまでは無理だと断ったら、

君が人を殺したのをかばってあげたのに冷たいなと言われた。

何の事かと尋ねると、

カラオケボックスで泥酔させて睡眠導入剤を飲ませて眠らせて、

殺されたように見せかけていた学生は、

本当に死んでいたのだと言う。

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