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「羨ましい」-2

だいたい今日は、私の父のお通夜なのに、

何で私が羨ましがられなければならないのだ。

何でもかんでもどんな時でも、羨ましがる彼でなければ、

こんな日に羨ましいなんて言葉を吐く奴は、殴り飛ばしていそうなものだ。

そう考えると、彼の羨ましがりにも、屁理屈にもずいぶん慣れたという事なのだろうか。

それにしても、私は慣れているから良いけれど、

家族親戚が彼に羨ましがられたりしたら、きっとけんかになってしまうだろう。

一言釘をさしておいた方がいいだろう。

「今日は、お通夜なんだから、お通夜に来ている親戚家族を羨ましがったりしたら、

けんかになるから絶対に止めてちょうだいね」

「わかってる、大丈夫だよ」

本当にわかったのだろうか、お通夜が始まると遺族である私は、

彼と一緒には居られなくなってしまう。心配だ。

「心配しなくたって、僕だって葬儀とかは初めてじゃないから、

それなりに経験しているから、大丈夫だよ」

「本当に、信用して良いわね」

「ああ、大丈夫」

心配だけれど、もう通夜の時間だ、彼を残し遺族席に向う。

宗派とか土地の習慣とかでも違うらしいが、

通夜が始まると僧侶のお経がありその後、弔問客の焼香が行なわれて、

弔問客が途絶えるまで遺族は、遺族席に居なくてはならない。

その間彼は、親戚や弔問客の中に一人で居る事になる。

彼の知り合いもあまりいないから、

逆に話しかけられて誰かを羨ましがるなんてことも無いのかもしれない。

弔問客の焼香が始まり、暫らくすると彼も焼香にやって来た。

特に問題もなく、普通に焼香を済ませて出て行く。

遺族席に頭を下げる彼を見ながら思う。

最初の頃は、彼に羨ましがられる事が結構嬉しかった事を思い出した。

しかし、暫らくすると嫌味な感じを受けるようになり、喧嘩する事もあったが、

それを過ぎると彼の純粋さと馬鹿さに呆れるだけで、怒りも何も感じなくなった。

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