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「チェンジ」-5

姉妹で写った写真を眺めながら、事故のときの事を思い出していた。

かなりぼんやりとしていたのだろう、いつの間にか腕を枕に眠っていた。

眠りの中で、なぜか私である筈の妹が話しかけてくる。

「姉さん、良かったね、明るい性格に変われて」

「なに、何のこと、私は元々明るい性格だったのよ」

徐々に思い出してくる。

2年前の事故の時の事。

そう、私は跳ね飛ばされた記憶が無い。

跳ね飛ばされた妹を見つめ、妹に駆け寄り、まだ意識のある妹との会話。

「入れ替わろう、ねえ、私より貴方が生きてた方が良いんだから、入れ替わろう」

「ダメよ、姉さん。私は良いの。姉さんが生きて、強く・・・、

変わるのよ・・・強い人に・・、チェンジ・・・・」

「・・・・・」

私は入れ替わったのだと思っていた。

あの「チェンジ」は姉が妹である私と入れ替わる合図の言葉と思っていた。

入れ替わった後自分が生きているのだから、自分が妹になったのだと思っていた。

自分の中の心は妹の心だと信じていた。

私は、私のままだったのだ。

入れ替わってなどいなかった。

妹は、私を生かすために入れ替わりを拒絶したのだ。

目を開けて写真を見る。

悲しみが全身に覆いかぶさるのを感じる。

妹が亡くなって初めて、妹の為に涙を流した。

深夜まで、ただ静かに涙していた。


翌日の3回忌の法要は、去年と同じ場所を借りて、同じメンバーで行なわれた。

しかし、法要のあとの会食では、もうあまり妹の良いところを褒める人はいなかった。

思い出話もあまり出なくて、親戚同士の世間話に終始していた。

誰かが姉である私を、最近明るくなって立派になってきたと褒めた。

私はその誰かの中に入ってみた。

姉である私と、亡くなった妹を等しく思いやる優しい心が有った。

その誰かは父だった。

もう人の心に入るのはよそうと思った。

人の心を覗き見するから暗い性格になったのだから。

そして父の為にも、妹の為にも、今のままの明るい私で有り続けようと決心した。

-END-

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No title

良い話ですね、こういうラストになるとは、
想像できませんでした。
今後の作品も期待しています。
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