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「料理物語」-4

楽に儲かる点だけが、何か悪い事をしているという思いを拭い去れない理由だった。

天然物と謳っている以上、量を急に増やせない、

増やすと怪しまれるという思いが有った。

そして、儲けすぎてはいけないという思いも。

心の隅に何か悪い事をしているのではないかと言う思いが有ったから、

なかなか大手を振っての商売が出来ず、

儲けても商売の手を広げる気にはなれなかった。

辞書で調べると、「天然とは、人工の加わらない自然のままの状態」と書かれていた。

人工が加わらないとはどの程度までの事だろう、

自然のままと言ってしまうと、人が採取した時点で天然ではなくなってしまうとも言える。

天然の鮎ですと言って、塩焼きの鮎を出したら、嘘をいったことになるのだろうか。

塩焼きと言う人工的な行為が加わった時点で、

確実に天然ではなくなっているとも言えるだろう。

しかし、誰も天然では無いと言って怒り出したりしない。

そう考えると、天然なんて結構曖昧なのではないかと思える。

そして、天然由来などと言ってしまえば、そうでないものを探す方が難しい。

結局天然などと言う言葉には、大した意味など無いと考えて間違いないのだろう。

世間一般とか、マスコミとかが勝手に有難がっているだけで、

とても美味しいとかの『とても』の様な修飾語としての意味しか無いようにも思える。

憲の商売は、普通に仕入れた商品に、天然と言う修飾語をつけて販売する、それだけの事。

楽して儲けたいと思っていた憲は、結局真面目にこつこつと商売をしているだけの男だった。

変な後ろめたさを持っていたから、逆に真面目な商売、地道な商売をやり続ける事になった。

楽したいなどと考えなければ、もっと楽できたかもしれないのに。

そして、月日が流れ、やがて自分の子供に

「働かざる者食うべからずだ、いい加減働くか何かしたらどうだ」

と叱る事になる。

人は弱いから料理しないと食べられない、

だから働くのだと自分なりの解釈をして。

-END-

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