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「散歩の神様Ⅴ」-1 

のどかで暖かな春の日だった。

のんびりと柔らかな日の光を浴びて土手の上の遊歩道を散歩していた。

私が散歩の神様と呼ばれるようになってから、どれぐらい経つだろう。

確かに散歩好きだけれど、それと名前の由来は違っていた気がする。

自分で名のる様になったのは、そう呼ばれ始めてからかなり経ってからだったと思う。

そういえば昔は、散歩の途中で良く人助けをしていた。

昔は歩いて旅をする者も多かったから、長旅の疲れで倒れる者や、

道に迷うとか、ちょっとした事でも困っている者が居たものだ。

現代では、旅となれば鉄道や車を利用するものだから、

疲れ果てて道端に座り込んでいる人などいないし、都会の中であれば、

病院も薬局もコンビにもレストランも何でも手近に建っている。

お金さえあれば、旅人が困り果てる事は滅多に無い。

だから、散歩の途中に困っている人に出くわす事も滅多に無くて、

散歩の神様としては、何もしなければ出番が無かった。

そこで最近、散歩の途中に手紙を落としていく事にした。

手紙には、悩みを抱えた人にだけ見つけてもらえるという、

不思議な力を込めてある。

今まで、金持ちになりたいと悩む者や、人の役に立ちたいと考える者など、

漠然とした悩みの持ち主から、少しは深刻な悩みまで、

役に立ったり立たなかったりして来た。

今日も一通の手紙を持っての散歩の途中だ。

いつもなら適当に風に乗せて飛ばしたりしているのだが、

もう少し効率的な方法は無いものかと考えていた。

御利益が有ると評判にならないと、神社の経営が立ち行かず、

御社を建て替えてもらいたいのに、資金不足で放置されてしまう。

御社は、木造建築だから数十年で立替が必要なのだ。

鉄筋コンクリートにすれば長持ちするけれど、昔ながらの趣や風情が無い。

風情の無い鉄筋コンクリートの御社でも良いのだが、まずは立替資金が必要だ。

評判を上げるには、ちゃんとした悩みを、きちんと解決してやらねばならないだろう。

土手の上から町並みを眺め、手紙に念を込めて風に乗せてみた。

風は手紙を包み、街の中を目指す様に、

すーっと飛び去り若干の期待を抱かせる。

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