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「散歩の神様Ⅴ」-2

散歩の神様の神社から程近い川沿いの民家。

昔は豪農で辺りの田畑の大地主だったが、

先代が農地のほとんどを宅地として売り払い、散財して使い果たして亡くなった。

ミエコが遺産を相続した時、家とその横に狭い畑が残っているだけで、

農家とさえ呼べない状態だった。

生計は自分の年金と娘のパートの収入だけで、細々と暮らしている。

狭い畑を駐車場にしてはどうかとか、アパートでも建ててはどうかとか、

いろいろ言う者もあったけれど、

借金して建物を建てても借金返済に家賃収入のほとんどを取られ、

修繕費だのなんだのを考えると、

一歩間違えれば銀行に担保に取られて何もなくなってしまうように思えたから、

今のまま孫に僅かでも財産として残してやりたいと思っていた。

それに、確かに畑としては狭いが、宅地にすればかなりの広さで、

農地として使い続ければ、税金も安く済むし、相続税も取られない。

そして、狭い畑とは言え、3人家族が食べる野菜の収穫には十分過ぎるものだった。

家も、昔の豪農の家だけに、平屋だけれどそこそこの広さがあり、広い庭もあった。

家と畑を合わせると、宅地にすれば土地代だけで1億を軽く超えるだろう。

だから、収入は少なくとも、外見上は資産家だ。

だから、妙な詐欺組織にも狙われる。

昼過ぎ、娘のトモコはパート先のスーパーに、孫娘のチエは学校に行っており、

ミエコ1人で家に居る時間だった。

家の玄関には、昼間年寄り一人で居る事が多いので、トモコが気を利かせて、

『悪質な訪問販売お断り! 

拒絶の意思を表明している消費者への勧誘は、市の条例などで禁止されています。』

の張り紙を貼っているのに、

その男は気にする事無く、

ドアホンのボタンを押した。

男の名はタダシ、28歳独身の詐欺会社社員。

勿論表向きは、ちゃんとした住宅リフォーム会社の社員である。

ミエコはドアホンのチャイムを一度目は無視した。

郵便や宅配業者だと大抵ドアホンを押した後、

「宅配です」とか「書留です」とか声をかけてくれるのだが、

押し売りの類は大抵無言で、

返事が無ければ直ぐにあきらめて立ち去ることが多かったからだ。

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