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「散歩の神様Ⅴ」-7

タダシは無料相談会の終わった事務所で後片付けを済ませ、

今日受け付けしサインを書き込ませた契約書のチェックをしていた。

先輩や上司達はさっさと飲み会に出かけていた。

タダシだけが居残りさせられていたが、別に下っ端だからではなく当番だった。

リフォーム詐欺の手立てとして、まず契約書の通り工事を行なわなければならない。

工事は、シロアリ駆除剤数千円分の散布と、

防振補強金具1個千円程度のものを数十個取り付けて、

実質人件費込み10万円程度のところ、

破格の300万円程度の請求をするというものだ。

直ぐに支払えない者には、ローンを組ませる。

工事が終わってしまえば、高すぎるといわれようとも関係ない。

経費などは誰にも分からない金額なのだから、

弁護士が出てきてとやかく言った所で、少し値引きさせられる程度の事だ。

相手に契約しやすくさせる為に、

契約書の内容的に違約金だのの条項は記載されておらず、

こちらが工事に着手するまでであれば、

契約解除しても違約金を取られない内容になっている。

その事に相手が気付く前に、工事に着手してしまうのが手だ。

だから、工事の手配は素早く済ませる必要がある。

工事を素早く済ませるのが、この詐欺の常套手段。

だから、急いで必要な工事の資材と人員を計算する。

そして、直ぐに資材を手配する。

契約書を見ながら、パソコンに工事日程や住所氏名、工事内容を入力して行く。

12枚の契約書は1時間ほどでデーターとして入力し終わり、

タバコに火をつけて一服する。

契約書の原本はすでに金庫に仕舞い込んであり、

今見ている書類はコピーだった。

スキャナーでコピーしデーターとしても取り込み済みであり、

今手にしている書類は、たとえ燃えてしまっても、何ら問題ない。

だから油断する。

朝早くから相談会の準備にこき使われて、

やっと相談会が終了したと思えば、食事も出来ないままに後片付けを任され、

最後に書類のデーター入力の事務仕事までやらされて、

疲れが溜まっていたのだろう。

そして、散歩の神様の眠りを誘う温かな風で、眠りに落ちてしまう。

手に持った火のついたタバコが、

書類の上にぽとりと落ちる。

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久しぶりに読ませていただきました。
次が気になりますねー。
また、暇を見つけて読ませていただきます。
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