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「散歩の神様Ⅵ」-4

年寄り夫婦に取り入る為にいろいろとご機嫌を取って隙を伺ったのに、

結局少しぼけた老人を装っていただけだったから、

付け込む隙も無く弱みもみつから無かった。

弱みに付け込む為、

地震で家が倒壊するかもしれないという話をして、

安く耐震診断しますと話し、

最後は手抜きの耐震補強工事で法外な工事費を請求してやろうと考えていたら、

翌日には専門業者が駆けつけて、

隅々まで調べて弱い箇所は補強してしまうという状況で、

常にこちらの上を行かれてしまい、一円の儲けにもならなかった。

しかし、たぶんあの老夫婦なら、俺をまだ信用し話を聞いてくれるはずだ。

町工場の新商品はきっと売りつけてみせる。

タダシは自信たっぷりだった。

後は中小企業の社長に俺を如何に高く売り込むかが勝負と思っていた。

手紙に書かれていた住所を頼りに、会社を尋ねてみると、

思っていた以上に小さな町工場だった事にがっかりした。

こんなちっぽけな工場の会社では、社長になったって高が知れている。

下手に共同経営者なんかになると、苦労するだけだろう。

正社員になったとしてもまともな給料をもらえるのかも心配な感じがする。

社員などになるより、謝礼だとかを高く吹っ掛けて稼いだ方がよさそうだ。

月末支払の家賃や光熱費が稼げれば、とりあえずは凌げると考えた。

取引先を紹介し紹介料を取る。

出来れば前払いで。

こういう古びた町工場の方が世間知らずで

騙しやすいかもしれないなどと思いを巡らした。

町工場の開けっ放しの入り口に立ち、中の様子を伺っていると、

不審に思った従業員らしき初老の男性が出てきて、

「何か用か」とぶっきらぼうに訊ねてきた。

覚悟を決めて話をしようと思ったとき、

奥から別の人間が「どうした」と顔を出す。

よくみると数人の人間が奥のほうで働いている。

タダシは、小さな工場でも案外従業員は居るものなだなと感心し、

頭を下げて「こんにちは」と挨拶してから

「すみません、社長さんはいらっしゃいますか」と訊ねた。

「どちらさんですか」

「えっと、その」タダシはなんと自己紹介したものかと迷い、

結局正直に「社長さんの手紙を拾いまして、届けに来ました」と言った。

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No title

ただしさん、いい人になってほしいものです。。

お話のコメントではありませんが、本日2010/2/1は雪がすごい。
久しぶりの大雪でうれしいのか、夜中なのに雪合戦している家族を発見!
ちょっとうらやましかった・・・。

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