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「散歩の神様Ⅵ」-6

社長はまだ半信半疑ながら、自分が書いた手紙に間違いない様なので、

もしかしたらと思い始めていた。

「と、言いますと、何か策をお持ちだという事ですか」と微笑みかける。

青年は自信ありげな態度で

「実際詳しい話を聞くまではなんとも言えませんが、

私の顧客の中に手助けできる人物が居るかもしれないと思いましてね、

私にはその橋渡しが出来るかもしれません。

ただし、私にも望みがあります」と言う。

少しの沈黙があり、互いに見詰め合う。

「そうですか。とにかく立ち話もなんですから、事務所でお話しましょう」

社長は何となく信じてみようと思い、詳しく話を聞くことにした。

特に自分にも望みがあるという言葉で、

条件を出すからには何か本当に当てがあるのかもしれないと感じた。

事務室での話し合いの結果、タダシの思っていた通りの事であり、

何とかできると確信した。

後は自分の望みを言い、かなえさせるだけだと思った。

「さて、それで、貴方のお望みは何でしょうか」

と社長から話をふられ、お金の話をしようと思ったとき、

お茶を淹れて社長の娘が入ってきた。

一目ぼれだった。

ダダシは、なぜかその女性に何度も会いたいと思った。

そして、とっさに言ってしまった。

「この会社の正社員にして下さい」

そして、深々と頭を下げていた。

「今回の仕事が上手く行けば、勿論正社員として雇います。

本当に上手く行けば営業部を任せても良い」

社長はそう言ってから「よろしくお願いします」と頭を下げた。




数年後、散歩の神様の御社の立替工事が完了し、式典が執り行われていた。

会社が持ち直し、更に新商品がヒットした中小企業の社長は、

大企業の社長になっていた。

倒産の危機を救ってくれたと信じるこの神社の御社の、

立替工事費を寄進したのだった。

大企業の営業部長となったタダシは、数年前のことを思い出し、

人の運命はほんの僅かな事で変わるのだと、感慨深かった。




新築の御社で、これでまた数十年は安泰だと大喜びの散歩の神様が、

人の運命も少しの事で大きく変わるものじゃが、

神の暮らしも思わぬことで変わるものじゃと感じ入っていた。

-END-

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