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ちょっと物語2-前半

「居酒屋にて」-前半

週末金曜日の夕方6時過ぎ、行きつけの居酒屋竹とんぼの暖簾はすでに

開店していることを告げていた。

暖簾をくぐり、健一氏は店の中をのぞき見た。

今日はすでにサラリーマンと思われる2人組みがカウンター席に座っている。

いつも、よく座る奥の席がふさがっていたので、2人から椅子1つ空けた真ん中

付近に座ると、手渡されたお絞りを受け取り、軽く手を拭き、飲み物を注文する。

「レモンハイ」の一言で、後はメニューが書かれたボードを眺めながら、

飲み物とお通しが出てくるのを待つ。

「今日は、イカ刺しと、カンパチがお勧めですよ」

暫くメニューボードを眺めていると、大将がいつもの様に、おすすめを教えてくれる。

「お通しの、菜の花と油揚げの和え物です」

レモンハイのグラスとお通しをカウンターに並べながら、店員さんがいつものように

お通しを説明し、「ご注文は、何になさいますか」と訊ねてくる。

「カンパチの刺身と、あとは、」少し考えて「マナガツオ西京焼きと、じゃがチーズ」

注文を終えて、菜の花を一口、レモンハイを一口飲んで一息ついた。

慣れている店でも、最初の注文を終えるまでは、なぜか緊張してしまう。

大将や店員の子にタイミングよく注文しなければ、嫌われるという強迫観念気味な

思いがある。

暫らくすると一品目のカンパチの刺身がやってくる、レモンハイと交互に飲み食い

しながら、店内のテレビに目を向ける。

テレビの音声は、会話の邪魔にならないように抑えているが、

何とか画面の中の状況はつかめる程度には聞こえてくる。

テレビを見ながらゆっくりと飲んでいると、2品目の西京焼きが出来上がった。

レモンハイをお代わりし、ほろ酔い加減になってきた。

左隣のサラリーマンたちは、会社の愚痴を話していたみたいだが、

なにやら問題が起こっているみたいで、暫らくすると店の大将に相談し始めた。

「去年の春入社した新人社員が、社長ともめてんですよ、社長が預けた書類を

なくしたらしくて」

「その社員は、なくしてないと言い張ってるんですか」

「そうなんですよ、なくすも何もそもそも書類は預かってない、と言ってましてね、

でも、仕事の受け持ちから考えても、彼が預かっているはずなんですよ」

健一氏は話を聞きながら、新人の若い社員が忘れるのより、

社長が忘れてる可能性が高いんじゃないかと思いつつ、だいたい若い社員に

嘘をつくメリットってあるのだろうかと考えた。

もし、本当に受け取っていて無くしたのだとしたら、なくしたと言うより、

受け取ってさえいないと言って、言い逃れをした方が助かる可能性がありそうにも思える。

「でも、本当に預かってないかも知れないでしょ、社長の勘違いって事は無いですか」

「社長の勘違いは、まず無いね、新人に書類を渡している所を、女子事務員が

見ていたと言っているから」

もう一人のサラリーマンが口を挟む。

「でも、書類を渡している所を見ていただけで、問題の書類かどうかは確認していないんだろ」

「いや、そもそも書類を受け取っていないと言い切っているんだから、言い逃れだろ」

目撃者がいたのなら、やっぱりその新人君は、言い逃れの為に、

書類は受け取っていないといっているのだろう。

問題は、新人君に白状させる事より、なくした書類をどうやって探し出すかだ。

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