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「ゲームのマ王」-10

親から独立して自分の家庭を持つ事。

大学で一人暮らしをしていた頃の一番の夢は家庭を持つ事だった。

でもその夢は本当に夢だったのだろうか。

単に一人暮らしの寂しさが家庭のぬくもりへの憧れになり、

家庭を持つ事を考えさせたのではないだろうか。

もしそうならば、それは夢と捉えて良いものなのだろうか。

ますます自分の夢が何なのか分からなくなってしまう。

少しぼんやりとしてしまった。

気が付くと元の事務所の自分の席に座っている。

元の事務所のはずだけれど、僕と彼の2人以外は誰も居ない。

「私は、ゲームのマ王です」と彼がいきなり名乗った。

マ王って何だよと思いながら、まだ僕はゲームの中にいるのだろうか、

それとも現実の世界に戻ってきたけれど、

幻覚で彼しか見えなくなっているのだろうかと考える。

「私がマ王だから、私を倒さないとゲームはクリアーできないよ」

何を言っているんだ彼は、倒すってどういう意味だ。

彼はどう見ても普通の青年だ。

マ王だと言うけれど、マ王らしい所なんて何処にも無い。

おまけに僕は彼と手を繋いだままなのだから、

彼が倒すべきマ王だなんて、ただの友達にしか思えないのに。

それに倒すと言ったって武器も何も無い。

まさか素手で大人の男を倒せと言うのだろうか。

僕は格闘技の経験が殆ど無い。

人を殴った事などたぶん無い。

本当に幼い頃に両親や祖父母を何も考えずに殴ったりしていたかもしれないが、

相手は痛がる振りはしていても、本当には痛くなど無かっただろう。

とても彼を素手で倒せるとは思えない。

たとえ彼がマ王では無くただの青年だとしてもだ。

暫らく凍り付いていた僕を、面白そうに眺めていた彼は、

「今はまだ倒せないのかな、それじゃあまた明日」

と微笑むと徐々に薄くなり目の前から消えていった。

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