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「視聴率」-6

人質がライバル会社の人間で、

お客として来ている訳では無いのだと思ってしまった事が、

お偉いさんの判断を鈍らせる。

人命第一で動くべき所を、犯人の持つ武器がナイフ1つに見えた事もあり、

犯人を逮捕することを優先するような思いに傾いた。

別室からこっそりと指示を送るお偉いさん。

その指示を受け付けに伝える中間管理職の行員。

犯人逮捕の時間稼ぎをするようにという指示で、

ゆっくりと動き、わざと分かりきった質問をする行員。

だが犯人の目的は、銀行強盗ではなかった。

犯人の目的は、銀行強盗の真似事で注目を集める事だった。

注目を集めてマスコミのカメラを集めたかった。

だから、犯人もそのための時間稼ぎをしたかった。

「あの、カバンはどこにありますか」

と受け付けの女性が気の抜けた感じでたずねる。

「おまえ持ってないのか、誰か手ごろなカバンを持ってないのか」

なんとも準備不足な感じの犯人だが、

犯人は銀行に入るときにはカバンを持っていた。

自分が持ってきたカバンはマサシが座っていた椅子の後ろに置いてきたのだった。

マサシは自分が手ごろそうなカバンを持っていることに気付いたが、

少し躊躇した。

これから商談に向かう為の資料が入ったカバンだから、

犯人に奪われると面倒だと思ったのだ。

しかし、考えてみれば今更商談どころでは無いし、

中身まで取られる事は無いだろうから素直に渡した方が人質から早く解放されるはずだ。

「あの、このカバン中身を出せばそこそこの金額が入りますから、手頃では無いですか」

とマサシは押さえつけられながらも片手に持ち続けたカバンを

ゆっくりとカウンターの上に載せて見せた。

犯人が頷くと、受付の女性がカバンを受け取る。

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