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「ひとがみ」-7

「無理にでも食べないとよくならないわよ」

と言う母の言葉に無理やり口を動かしてのどに流し込む。

幸い不味くても食べやすく調理された食物だから、

あまりかまずに飲み込むことが出来て助かった。

それでも食後の薬を飲み込むのには苦労した。

薬のせいかおなかがふくれたせいなのか、

何もやることが無いから退屈すると思っていたのに直ぐに

睡魔が襲ってきてくれて、眠りにつくことが出来た。

     ★

2人とも眠ったならば出発だ。

ひとがみは二人の体からこころを抜き出して空高く舞い上がる。

2人のこころは夢の中から連れ出されて空を舞い、

美しい夜景を楽しんだ。

ひとがみは言う。

「これから2人絶対に手を離す事無く旅を終えることが出来たなら、

願いがかなうだろう」

2人には互いに相手が誰なのか判らなかった。

手は繋いでいるけれど相手の姿が見えなかった。

タケヒコはそれでもたぶんユウヤだろうと思ったし、

願いがかなうというのは

ユウヤの病気が治るという事だろうと思った。

ユウヤはまったく心当たりが無かった。

自分が入院してからの数日間誰もお見舞いには来なかったから、

友達にも忘れられていると思っていた。

友達でないなら誰だろう。

両親のいずれかか、祖父母か。

いや、いずれでもない気がした。

ただ、自分を病院から連れ出してくれる誰かではないかと感じていた。

自分の願いは退屈な病院から早く抜け出す事だから。

 

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