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「ひとがみ」-13

期待に反して先生の姿を見られなかったけれど、

ユウヤからその分面白い話を聞けた。

「先生は、病室に入ってくるなり、ご愁傷様ですって言ったんだ、

うちの父さんが来ていて先生を掴んで病室から押し出して、

どんな話をしたのか分からないけれど、

先生は千羽鶴だけ置いて直ぐに帰ってしまったんだ」

やはり思ったとおりの非常識先生だったみたいだ。

その場面を見たかったと言うとユウヤはあまり面白い事じゃないと言う。

「まるで僕がもう直ぐ死んでしまうような感じがするじゃないか」

と言ってすねる。

そうなのだ、ユウヤが余命半年でなければ

みんなで笑い飛ばせばよい話だけれど、

死ぬ可能性の高い人に向ってやらかした事だから、

笑い事には出来ない。

けれど、ここで笑い話にしなければ、

まるでユウヤがもう直ぐ死んでしまう事を

認めているような感じになってしまう。

とても微妙で難しい問題で、先生の事を笑ってはいられない。

話をそらす為に千羽鶴の方に行き、

自分が折ったものを探し出して

「この鶴は昨日の昼休みの学校製で、しかも僕の手製だぞ」

と自分の手のひらをユウヤに向けておどけてみる。

その手にユウヤが自分の手を合わせて軽く握る。

何か少し覚えのある感触。

そのままタケヒコはユウヤと一緒にベッドに倒れこんで横になると目を閉じた。

ほんの暫くの事だったのだろう。

二人は眠りについていた。

そして手を握ったまま白い光の中にいた。

そして思い出す。

昨夜の夢の続きに居る事を。

今度は手をつないでいる相手がはっきり見える。

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