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「ひとがみ」-16

少し前に落語の話で死に神の話を聞いていた。

死に神を出し抜いて死に掛けている病人を救った男が、

代わりに寿命を削られてあと少しで死ぬという話だった。

そんな怖い話を思い出してもタケヒコは手を離そうとしなかった。

ユウヤは初めのうち手を離そうとしていたけれど、

友人のタケヒコの思いを受け入れようと思い抵抗するのを止めていた。

今は力を借りるだけで、

あとできっと返す事が出来ると信じることにしたのだった。

2人の心が繋がった事を確認して、ひとがみはその力を発揮した。

とても長い時間眠ったつもりでいたけれど、

2人が目を開けると、ほんの一秒も経っていない様子だった。

ほんの一瞬の間に2人の心は繋がったものになっていた。

     ★

タケヒコが通学途中に車に引かれてあっけなく亡くなったのは、

3日後の事だった。

同じ日にユウヤは再検査の結果病気が間違いだったと分かり、

ガンだと思われた物がただの腫れで、

すでに治っていると言われ退院する事になった。

そして、退院した日がタケヒコの告別式の日となった。

だがタケヒコの心だけはユウヤと繋がったまま

この世に残りユウヤと共に生き続けていた。

繋がって1つになったユウヤとタケヒコの心は

ユウヤの1つの体の中で完全にひとつになっていた。

ひとがみには分かっていた。

タケヒコの寿命が実はユウヤよりも短い事を知っていた。

2人とも余命半年あるかないかだった。

二人ともには生きられないから2人で一人になって生きる道を創ったのだった。

タケヒコの僅かな寿命の殆どを使ってやっとユウヤの病を治す

そんな力しかないのが、ひとがみだった。

-END-

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