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「満員電車の攻防」-8

何か理由があっての大混雑なのだろうと考えて、

原因を想像し始めた。

単純に事故で電車が遅れている。

それならば遅れていることを謝罪するアナウンスが流れるはずだ。

何か大きなイベントがあったか、これから行なわれるか。

しかし、これからならまだしもすでに大きなイベントが終わったというのは、

朝の通勤時間帯では考え難い。

これから始まるイベントとしても、この電車に人が集中するとは考え難い。

集中しているわけではないとすれば余程大人数が集まるイベントと言う事になるが、

そんなイベントの話は聞いた事が無い。

まさかとは思うが、

俺と同じ様にたまたま少し早く目覚めた人達が大勢いたのだろうか。

だいたいいつも、俺よりかなり早く出社している部長は俺に、

「もう少し早く出社すれば空いている電車に乗れて楽だぞ」

と言っていた。

いろいろと想像してみるがたいした事は思いつかない。

目の前の席に座っていた男が、何かもぞもぞしている。

電車が次の駅にもうすぐ到着するという時になって、

座っていた男は立ち上がろうとする。

次の駅で降りたいのだなと言う事は、直ぐに誰にでも想像がつく。

しかし、ギュウギュウ詰めの電車内で駅に到着してドアが開く前に、

席を立とうとしても無理と言うものだ。

立ち上がれるスペースがないのだから。

いや、立ち上がる代わりに誰かが座ればよいのだ。

目の前に立っているタケルが、

座っている男と上手い具合に入れ替わって座れば、

今座っている男はタケルが立っている場所に立つことが出来る。

立ち上がろうとする男、男の代わりに座ろうとするタケル。

上手い具合に少しずつ体を入れ替えていく。

実際にはほんの一瞬だが、2人にとっては長い攻防が終わり、

タケルは席に座り込んでいた。

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