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「幸運」-8

 私に手を貸してくれていた男は、

別の男を呼び寄せて二人で私を担ぎ上げるようにして外に連れ出し、

玄関ホールのベンチに座らせた。

「救急車を呼びますから、暫らくここに座っていてください」

と言われ、早く建物の外に出て、

建物から離れなくてはならないのにと思いながら、

一人ではとても動けそうにないから、私もこれまでかと諦め掛けていた。

だがまだ時間は十分ほど残っている。

直ぐに救急車が到着し運び出してくれれば、

攻撃される前にここを離れる事が出来るかもしれない。

 私を運んでくれた男達が、受付で眠る人達に気付いて起こそうとするが、

なかなか起きないものだから、騒ぎ始めた。

 やばいと思った。

救急車が直ぐに到着しても、意識の無い人間の方が優先されるだろう。

今度こそ私は死ぬのだと諦めた。

 暫らくして救急車が一台到着する。

しかし、やはり乗せるために運ばれたのは眠っていた人間達だった。

 一人の若い男が私に近づいてきて

「貴方は、受付の人達が倒れるところを見ましたか」

と訪ねた。

私が静かに首を横に振ると

「そうですか、誰かに毒物でも飲まされたのでなければ良いのですが」

と心配そうな顔をして、私の側を離れると受け付けに向かい、

そこに有った椅子に座り込んだ。

 私の事を疑っている様子で、私から目を離そうとしない。

もしかしたら警察も呼んでいるのかもしれない。

だとしたら現場にいた私も重要参考人として取調べを受ける事になるかもしれない。

 私はこの結婚式とは無関係の人間だ、

そんな人間が式場の扉を開けて中に入ったと言う事だけで、

十分に怪しいだろう。

だが、今心配すべきは、この場からどのようにして離れるかだ。

 

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