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「幸運」-9

 爆撃開始時刻一分前。

足が大丈夫であってももう逃げ出すにも間に合わない時間だ。

天候不順か何かで爆撃の時間が先延ばしになってくれないものだろうかと考える。

しかし、今日はとてもよい天気だ。

 ついに、正午の鐘がなった。

予定どうりなら、直ぐにも爆弾の雨が降るはずだ。

 だいたい私がこんな任務を命じられた理由が、

犠牲者に安らかな眠りを与える為では無い事ぐらい分かっていた。

分かっていたが、自分でも分かっていない振りをしていた。

爆撃が始まって直ぐにみんな逃げ出せば助かってしまう人間が多くなり、

犠牲者の数が世界にアピールするには少なすぎるという事になるかもしれない。

だから誰も逃げ出さないように、事前に眠らせる必要が有ったのだ。

 良かったのかもしれない。

私が任務を果たせなかったおかげで犠牲者が少なくて済むかもしれないのだから。

その代わりに私は逃げ出す事が出来ずにここで死を迎えるのだろう。

 結婚式が行なわれている部屋の中から歓声が上がった。

たぶん結婚の儀式が終わって新郎新婦が無事結ばれたのだろう。

気が付くと受付で私を監視していた青年もいなくなっていた。

膝の痛みも弱まっている、

一人で立ち上がれそうだと思い立ち上がってみると、

意外にも痛みは大した事が無い。

 今更式場に入り込んで皆を眠らせるのもどうかと思い、

爆撃が遅れているだけならば早く脱出するべきだと考えて、

まだ少し痛む膝を抱えながら外に出た。

 上空を見上げても爆撃機が飛んでくる様子は無い。

多分かなりの上空から爆撃するのだろうから、

ただ単に見えないだけかもしれない。

少しの疑問を持ちながらも帰宅を急いだ。

 

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