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「散歩の神様Ⅶ」-1 

 初夏を過ぎ、まもなく梅雨入り宣言の季節を向え、

気温の高い日が続いている。

「万里子さん、ちゃんとしなさい」

もう直ぐ6歳の娘を軽くたしなめる。

 娘は、電車の窓から外の景色を眺めるのが好きで、

座席に座ると直ぐに後ろを向いて窓の外を見ようとする。

空いている電車であれば周りから睨まれる事も少ないけれど、

ある程度混雑した電車内では、

いつ誰から文句を言われるかと冷や冷やさせれれる。

「ちゃんと前を向いて座りなさい。でないと食事抜きにするわよ」

少しは脅しに屈してくれれば可愛げがあるのに、

娘は結構平気な顔をしている。

 それでも、頭の良い子だから、

私が本当に困った顔をすれば、おとなしくしてくれる。

「ママ、ジュース飲んでいい」そう言うと私のカバンから、

ペットボトルを取り出しにかかりかる。

私は娘のしたいようにさせながらも、

「良いけど、少しにしなさい」と注意する。

「うん」とひとこと言ってペットボトルを抜き取り、

ストローを口にくわえた。

「すみません、落ちましたよ」と言って、

直ぐ近くに立っていた若い女性が、手紙を渡してきた。

何のことか分からずに受け取るが、

受け取ってからも何なのか分からなかった。

 暫く渡された手紙を手に持ったまま、ぼーっとしていたが、

さっき娘がペットボトルをカバンから抜き取ったときに、

この手紙が一緒に飛び出して、

床に落ちたように見えたのかもしれないと考えた。

 だとしたら、本当の手紙の持ち主が居るはずなのに、

それらしい人物が見当たらない。

と言う事は、落とし主はすでに下車してしまっているのかもしれない。

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