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「痛みのない世界」-4

 本当に、思考離脱装置は

幽体離脱のような現象と捉えてよいのだろうかという疑問だ。

確かに装置を使用した人は、

幽体離脱のように自分の身体から抜け出して、

自由にいろいろな場所へと出かける事が出来たと言う。

 自由にいろいろな場所と言うが、

装置が思考を飛ばせる距離はたいした距離ではないはずだ。

それに装置には目も耳もないのだから、

思考そのものが何かを直接感じ取るしかないのだが、

実際に何かを見聞きしているのだろうか。

単に夢を見ているだけではないのか。

それに、装置を使用中の人の体を刺激するとそれなりの反応がある。

 体は生きているのだから反応して当然だし、

装置の使用後に確認しても、

本人は使用中の体への刺激は何も覚えていないのだから、

それで良いのだろうと思う。

だが、もしかしたらと言う気持ちが残る。

 もしかしたら、

体そのものはものすごい苦痛を感じているのではないかと言う疑問。

自分の記憶として痛みも苦しみも無いだけで、

実はものすごく痛くて苦しい思いをしているのかもしれない。

そんな風に思うと怖くてとても使えない。

そんな疑問をもった私は、自分で装置を使ってみる気にはなれなかった。

だから、その後装置が安価となり普及しても、私だけは使わないでいた。

 私の他にも同様の疑問を持つ人は居て、

装置を使わない人も多少は居たけれど、

やはり興味とか好奇心に勝てずに大部分の人が使用に踏み切ったようだ。


 ある日ふと気付くと、

私の周りにはまともな人間が一人も居なくなっていた。

装置はいつの間にか大幅に性能を上げていて、

思考離脱装置で離脱した思考で、元の体を操るようになっていた。

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