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「痛みのない世界」-7

「そうさ、そしてここは仮想と現実が混合している世界のようだよ。

この世界の人間の思考が現実世界の人間の体を

ある程度支配して動かしていると言うか、

同調しているみたいなんだけど、不完全な同調状態みたいだよ」

「えっと、それはもしかして」

「なぜか、現実世界の人間の体の痛みとか苦しみとかは、

まったくこの世界には伝わってこないみたいなんだ。

新入りさんなら分かるでしょう」

「はい、現実の世界では、みんな傷だらけ血だらけでしたが、

でもなぜか自分は怪我なんかしていないと言い張っていました」

「まあ、その部分はこの装置の目的だったからそういうことなんだろうけど、

ただね、ウィルスに感染した装置からは、誰も抜け出せないみたいなんだ」

「私も、一分間で終了して元に戻るようにセットしていたんです。

でも一向に戻れなくて」

「たぶん、戻れないままになるかもしれないよ。

そのうち体は傷だらけで、戻りたくても戻れなくなるだろうしね」

「体が死んでしまったらどうなるんでしょうか」

「装置が生きている限りは、この世界で行き続けられるはずさ。

だから、あきらめてこの世界を開発し現実の世界にするしかないのかもな」

確かに、重い体を脱ぎ捨てた、思考体だけの生命と言うのは、

生命の進化の最先端の姿かもしれない。

何しろ省エネだし、痛みも感じないのだから。

ただ、この後の進化とか発展とかは有りうるのだろうか。

それより本当に体が死んでも生きていられるのだろうか。

思考だけの存在でなにを楽しみに生きれば良いのだろうか。

それより装置の電力供給は・・・。

心配事が多すぎて心が苦しい。

身体の痛みは無くなったが、

心の痛みはどうしてくれるんだ。

‐END‐

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