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「金持ちになった男」-13

 次長に昇格したとき、

部長に昇格したとき、

それぞれ人から認められたという喜びがあり、

上下の板ばさみという中間管理職より上の管理職という地位になれば

精神的には楽だろうと言うのが望みだったけれど、

やはり役職が上になればなるほど精神的には辛かった。

 もはや、『大金持ちだから、いつでも会社を辞められる』

は何の気休めにもならなくなっていた。

辞められると思いながら、

辛くてもやめられないままで来たのだから、

辛くても耐え続けるしかないという思いに変わっていた。

 ある日の帰り道、

駅のホームで少しずつ端へと進んでいた。

足がふらついてホームから落ちそうになる。

電車の警笛にわれに返り後ろに下がる。

 仕事の忙しさで私生活はまったく充実しないままで、

少し高級な家電を買い揃える程度だった。

部長の給料ではたいした出費でもなかった。

 もう殆どうつ病だった。

踏み切りの音を聞くと吸い込まれそうになる。

ビルの屋上などには近付かないようにした。

何とかぎりぎりのところで耐えながら仕事を続けていた。

そしてついに定年退職のときが身近なものとなってきた。

 定年が近付くと少し精神的には楽になってきた。

とにかく後少し定年までがんばれば、

いやでも退職する事が出来るのだ。

それからの数年は毎日少しずつ楽になって行った。

 無事定年退職を迎えると、

退職金も満額支給されて、

さらに金持ちになった。


 退職してから、

金は有るのに何もすることが見つけられなかった。

田舎でのんびりするのが好いだろうと思い、

田舎で家を探すために実際に見学に出かけて、

不便な田舎には住めないことを実感した。

都会の便利さに慣れきっていたからだ。

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