fc2ブログ

「広い家に住む為に」-8

 一年ほどは何とかなった。

一年ほど経ったある日、嫌っていた父から連絡があり、

母が亡くなったと聞かされた。

大急ぎで田舎に帰り、母親が入院した病院に駆けつけると、

すでに遺体は実家に引き取られた後で、急いで実家に行くと、

母の遺体が居間の隅に敷かれた布団に横たえられていて、

白木の台に線香と蝋燭が手向けられていた。

 家の中にいるはずの父は何処にも見当たらず、

暫く呆然として座り込んでいると、近所の人が焼香に訪れ始めた。

「このたびはどうも、ご愁傷様で」

「はあ、どうも」

「お母さんは大変だったわねえ。本当にがっんばっていたものね。

お父さんはどこにいらっしゃるの」

「さあ、私が家に帰ってきたときには居ませんでした」

「しょうがない人だよあの人は。

自分の奥さんが亡くなっていると言うのに、どこに行ったんでしょうね」

「はあ、本当にどこでしょうか。

ぼくも長い間会ってないんですよ。

昨日の電話で、母が総合病院で亡くなったと連絡してきたきり話もしてないんです」

 近所の人と話していると、知らない人が勝手に家に上がって来た。

こちらが頭を下げると、相手も頭を下げる。

「もしかして、息子さんかい」

「はい」

「ああ、それはどうも。このたびは」

「はあ、どうも」

「いやあ、それにしても大変だったよ。

お宅のお父さんはどういう人なんだい。

私らにお母さんを任せてどこかに消えてしまうなんて」

「はあ、どういうことでしょうか」

「いやあ、わたしゃあ、ここの町内会の世話役なんだがね、

今朝早くに病院から電話があって、御遺体を引き取って欲しいって」

「はあ、町内会にですか」

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

フリーエリア
カレンダー
01 | 2024/02 | 03
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 - -
リンク
最新記事
カテゴリ
最新コメント
検索フォーム
QRコード
QRコード