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「広い家に住む為に」-21

「はあ、その、私の取り柄としまして、

真面目に単純作業をこなすのは得意ですので、大丈夫だと思います」

「それは頼もしいね。以前は女子社員を募集していたんだけど、

女子社員の定着率が異常に低くてね、直ぐに辞めてしまうんだよ。

まあ辞める理由はさまざまだけど、最近では女子社員でも、

やりがいが感じられないと嫌だとかいう人が多くてね、

たぶん単純労働的な仕事は嫌われるんだろうね」

 女子事務員の定着率が低い理由は、他にあるような気がする。

人事担当者の助平そうな顔を見ればそういうことだろうと想像はつく。

そういう事であれば、私には何の問題も無いことだと思えたし、

助平そうだけれど、人は良さそうに思えた。

「はい、私は大丈夫だと思います」

「男ばかりの事務所でね、若い女子社員は直ぐに辞めていくから、

それならばこの際、給料が安くても良いと言う男子社員を雇ってみることにしたんだよ。

だから、女性のいない職場だから、その、女性との出会いを期待してもムダだよ」

と少なからず助平そうにニヤつく。

もしかしてこの人は女性だけでなく男にも興味があるのかと気味悪くなったけど、

それならば、いじめられる事は無いだろうと思った。

「はい、大丈夫です。職場で変な事を考えたりはしません」

とまじめにはきはきと答えてみせる。

「それじゃあ、後日結果を連絡するので、今日はこれで失礼するよ」

 人事担当者は、たいした説明もしなければ、

たいした質問もしないまま席を立ち、そのまま立ち去ってしまった。

からかわれたのではないかと思ったが、後日採用の知らせが届いた。

 結局何人の応募が有って私が採用されたのかは分からなかったが、

不況のさなか、それなりに狭き門だったはずだと思っている。

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