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「広い家に住む為に」-33

「はい、ですが私でよろしいですか、先生の跡を継ぐのが私のような未熟者で」

「良いさ、君は良くがんばってくれているし、みんなの評判も良い。

わしの養子になれ」

言葉は命令口調なのに、目は真剣に私に頭を下げていた。

「はい、ありがとうございます。喜んでお受けいたします」そう答えて頭を下げた。

先生は、自分の後援会に私を市長の後継者だと宣言してくださった。

もちろん私の行いが良くなくて、選挙で当選しなければ意味の無い話だが、

私もそれなりに努力してきたから、

次期選挙では市長に当選できるものと信じていた。

ところがいざ選挙が近づくと、ライバル陣営の追い上げが激しくなった。

ライバル陣営は人気タレントを候補者に擁立してきたのだ。

私が先生の養子だという事もマイナスに作用した。

実の子供では無いけれど養子なのだから二世候補だと批判された。

だが、いざ選挙が公示されるという直前で、先生が倒れ、

急遽お亡くなりになってしまった。

なぜかこの事が私に追い風となり、

亡き先生の弔い合戦だという事で盛り上がり、辛うじて私は市長に当選した。

市長となった私は、先生の養子になっていたおかげで、

先生の莫大な財産も相続する事になり、

先生の住まいだった豪邸が、私のものとなった。

初登庁を済ませ、豪邸への引越しも終わり、

自宅である豪邸の縁側で、庭をぼんやりと眺めた。

やり遂げたという思いがわいてきた。



 気が付くと、直ぐ目の前に男が立っていた。

 男には見覚えが有るような気がした。

そして男の「夢はかなえられたか」と言う問いかけで思い出した。

約二十年前、土手の下に転がっている私に声をかけてきた男だった。

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